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私は造られた存在。 涼宮ハルヒの観察を目的として情報統合思念体は私を生み出し地球に送りこんだ。 涼宮ハルヒの精神に影響しないよう私には朝倉涼子と違い喜怒哀楽と言うパラメーターが存在しない。 ゆえに私には感情という概念が欠落している。 部室で本を読んでいると扉が開き、今日も彼は私の前に現れた。 「長門・・・お前一人か?」 私が合図を送ると彼は私の前に腰掛けた。 彼は涼宮ハルヒの鍵になる特別な存在。 情報統合思念体も彼を重要視している。 そして私にとっても特別な存在。 部室で本を読んでいると扉が開き、今日も彼は私の前に現れた。 「長門・・・お前一人か?」 私が合図を送ると彼は私の前に腰掛けた。 彼は涼宮ハルヒの鍵になる特別な存在。 情報統合思念体も彼を重要視している。 そして私にとっても特別な存在。 彼はいつも私のことを気にかけてくれる。 私という個体も彼のことが気になる。 だが私には独断選考は許されていない。 私が彼と仲良くすれば涼宮ハルヒの力が暴走する恐れがある。 だから私は彼に何もできない。 下校のとき私の下駄箱に一枚の手紙があった。 差出人は不明。 『放課後校門で待ってます』 そう一言だけメッセージがあった。 私は校門に向かう。 校門には見知らぬ男子生徒が立っていた。 その生徒は私を見つけると私の目の前までやってきた。 「な、長門さん!」 男子生徒は真剣な表情で私を見る。 「・・・・・なに?」 「お、俺長門さんが好きなんだ!付き合ってくれ!」 予想はできていた。 「・・・あなたの気持ちに応えることはできない」 私がそう答えると男子生徒は涙を流して走り去っていった。 私は恋をしてはならない。 そう。私の役目は涼宮ハルヒを観察すること。 …それでいい。 恋ってなに?に戻る
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解説 24チーム96名が送るチームリーグバトル。 4つのリーグに分かれて戦い、決勝トーナメントを行う。 出演者はわりとオーソドックスなメンバーだが、珍しいキャラもそれなりの実力があるので、いい戦いが期待できる。 出場選手 + ... 青髪美人 朝倉涼子 クーラ・ダイアモンド 水瀬名雪 廿楽冴姫 悪魔 ジェダ スラッシュ エトナ バージル 宇宙人 ルーミ プレデター シュマゴラス パイロン 狼 テリー・ボガード 斬真狼牙 ガロン ましろ オリジナル? 七夜志貴 エレクトロゾルダート クリザリッド オメガ 俺の嫁 妖夢 ELLA アンヘル A.B.A きゅう Q チルノ 悪Q ナインボール・セラフ 軍人 マルコ・ロッシ ハイデルン 石馬戒厳 アカツキ 血液型: 麟 エイリアン 豆乳 NEO-DIO ザ・ワールド!! ゼノン・ゼシフィード 長森瑞佳 十六夜咲夜 DIO 主人公() アレックス アッシュ アサギ シオン・エルトナム・アトラシア 体操服 まりん 堀田大悟 このは 花小路クララ 憑いてる 橙 アリス・キャロル ザッパ 空条承太郎 天使 スーパーノービス カサンドラ 比那名居天子 アンジェリア・アヴァロン ドラゴン ハウザー グリゼラ 恋するドラゴン 堕瓏 トランプ使い ジョーカー オズワルド 煉 ガンビット 忍者 いぶき 破鳥才蔵 如月影二 カズマ NINJA 不破刃 星影 汚い忍者 チップ・ザナフ ネクロマ アリス のぶ子 ジル KJ晴香 猫 フェリシア レオ つー レン パイルバンカー ブロディア ゼニア・ヴァロフ リーズバイフェ・ストリンドヴァリ スレイヤー 病人 右京 スマイル トキ 栞 メイド ゆきな フィオナ・メイフィールド ティセ・ロンブローゾ 琥珀 弓 リンディス 中西姉妹 真鏡名ミナ 神奈備命 コメント 最近では珍しい「普通」の大会。動画の作りも丁寧だし、バランスも概ね良好だからうp主には色々と期待したい! -- 名無しさん (2010-05-23 18 07 41) ページ作成してくれていたんですね。ありがとうございます。(気付かずお礼が遅れてしまいすいませんでした) -- アリオナ (2010-08-14 08 32 00) 名前 コメント マイリスト
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長門有希は文芸部員兼SOS団の団員である。そして、宇宙人の作ったヒューマノイドインターフェースでもある。 今日もいつものように放課後の文芸部部室で、人を撲殺出来そうな厚さの本を読んでいた。 部室には有希の他に、SOS団団長、涼宮ハルヒ。 超能力者で、機関の構成員の副団長の古泉一樹。 未来的萌えマスコットキャラ朝比奈みくるが居た。 3人は今日、ある共通の話題を話していた。 ハルヒは不機嫌そうに、一樹は笑顔の奥に不安を隠し、みくるは俯き一樹の様に不安を隠せずに。 「さて、彼が来なくなって一週間以上が経った訳ですが・・・」 「キョン君・・・本当にどうしちゃったんでしょうか・・・?」 先週から4人以外の団員、本名は不明の団員であるキョンという名の男子生徒が学校に来なくなっていた。 そのことについて3人は話していたのだ。有希は本を読みながら3人の話を聞いていた。 「電話をしても出ないし・・・風邪じゃ・・ないですよね・・・?」 「あの馬鹿が風邪なんか引くわけ無いでしょ!馬鹿は風邪を引かないって学会で証明されてるのよ・? きっと、そう、あれよ!キョンは暗いところがあったからヒッキーになっちゃったのよ 許せないわね、学校はともかくSOS団を無断欠席するなんてSOS団に有るまじき許されない行為だわ! これからキョンの家に行って引き摺りだして来るわよ!?いいわね?」 「そうですね、何かあったのなら家族の方にも事情が聞きたいですしね」 「有希も行くでしょ?」「……………」 コクリと、有希は無言で頷いて分厚い本を閉じた。 SOS団一行は学校から真っ直ぐにキョンの自宅に向かった。 「しかし・・・彼も全く困ったものですね 彼のお陰で涼宮さんの閉鎖空間の発生確率が通常の3倍です。 最近は落ち着いてきて安心しきっていたらこれですからね」 「涼宮さんもキョン君が居ないとなんだかイライラしてて落ちつかないようですからね・・・」 「えぇ、僕も彼の顔を見ないとムラムラして来ますよ」 「「………」」 「・・・・・・時に長門さん、彼について何かご存知な事はありませんか? 例えば長門さんとは別の派閥の者が動いていた事は無かったか、等です。 何かがあったにしても彼なら何かしらの連絡をくれるでしょうし 学校を休む、それも無断でです。今までの彼なら有り得ないことです。 何か異常事態が発生して、彼は連絡と取れない状況下にある。 また、あるいは彼自身に何かが起こっている・・・」 「わからない。……異常は検知出来ていない」 「・・・そうですか。 長門さんにもわからないとなれば本当に涼宮さんの言うとおり塞ぎ込んでいるだけかもしれません・・・、ね」 ハルヒはムスっとした顔のまま3人と話そうとはしなかった。 その後一行は無言のままキョンの自宅に着いた。 ハルヒは物凄い勢いでインターホンを押した。 少し待っているとキョンの妹が出て来た。 「あっ!ハルにゃん!それに有希ちゃんにみくるちゃんに阿部さん!」 「古泉です」 「こんにちは妹ちゃん、ねぇ、キョンいる?」 「・・・キョン君ね、ずっと前から部屋の中から出てこないの・・・ でね、声かけると『うるさい!』って怒鳴って怖いの・・・なんだかキョン君じゃないみたいなの・・・ ねぇ・・・ハルにゃん・・・キョン君どうしちゃったのか知ってる?」 「そう・・・ちょっと上がらせてもらうわよ。みんなも一緒に来て!」 一行はキョンの妹を加えてキョンの部屋前に来た。 最初ハルヒがドアを開けようとしたが内側から鍵がかかっていて開かなかった。 「ちょっとキョン!あけなさい!妹ちゃんまであんたの事心配してるのの? あんた何とも思わないの?聞いてるんでしょ?四の五の言わなくてもいいから開けろ!」 「キョンくーん、あけてー・・・」 「ほら、あんたの大好きなみくるちゃんも言ってるでしょ?開・け・な・さ・い!」 そう言うとドアの内側から鍵の外れる音がして、ドアが開いた。 ドアの向こうにはキョンと思われる人間が立っていた。 「・・・キョン・・・・・・?」 ドアが開いた先には痩せこけ、全身からは生気が一切感じられないキョンが居た。 ハルヒたちは最初、それがキョンでは無く橋の下でうろついているホームレスが キョンの代わりに部屋に居座っていたと思ってしまったぐらいだった。 恐らく一週間以上部屋から出ていなったのだろう。 臭いの元を想像したくないほどの臭いが漂ってきていた。 「・・・なんだよ、うるさいだろハルヒ わざわざ大声出さなくてもちゃんと聞えてるぞ」 「あんた・・・キョンよね?・・・大丈夫なの?」 ハルヒはキョンを見て、文句を言うよりも先に今の姿を心配してしまった。 流石のハルヒも今のキョンの状態が異常である事に気付いてのだ。 「何言ってんだ?大丈夫なわけないだろ? もうな、疲れたんだよ。お前に振り回されるのも。 後ろの3人のくだらない相手をするのもな・・・ってこれは禁則だったか? ま、どうでも良い事だがな。いい加減迷惑だ、俺は一般人なんだ、お前らと居るのにはうんざりなんだよ・・・」 「…」「そんな、キョン君・・・うそ・・・」 「わかったらさっさと帰ってパトロールでも何でも勝手にやってくれ 俺を巻き込むのはもうやめてくれ、ほら、帰れよ」 キョンは涙の後のある血走った目で、4人を睨んだ。 「お前ら・・・そう、お前らのせいだよな。 お前らのせいで俺は何度も殺されそうになった。 わがままに付き合わされて、奴隷の様にも使われた。 俺が何かしたか?お前らに迷惑の1つでもかけたか? 俺が悪いのか?そうなのか?お前らにそういう扱いをされなきゃいけような事、してたか? ・・・疲れた。もうどうでもにでもなりやがれ。世界が終わろうが俺には関係無いね」 「そ、そんな事無いです・・・キョン君は・・・その・・ごめん・・なさい・・・ 私のせいですよね。あなたを巻き込んで・・・うぅ・・・っ・・・」 「朝比奈さん、謝らなくていいんですよ。ただ俺の前から消えてくれればいいだけなんです」 「ちょっとキョン、あんた何よ!言いすぎじゃないの? だいたい何よ、世界が終わるって、変な小説の読みすぎで頭おかしくなったんじゃないの?」 「お前が言うなよ。何度も言わせるな、帰ってくれ」 「・・・あなたらしくはありませんね。 あなたは何だかんだと言いながら今までの状況を楽しんでいたはずです。 それが急にこの心変わり、何かあったのでしたらお話をききますが?」 「気付いただけだよ」 「…………失望した」 「あぁ、そうしてくれた方が俺も楽だ、さぁ、帰ってくれ!」 その後キョンはドアを閉め鍵をかけ、また部屋にとじこもってしまった。 キョンの妹は兄の突然の変化に驚き、困惑し、訳もわからず泣いた。 4人は同じように泣いているみくるを連れてひとまずキョンの妹も一緒に喫茶店に行った。 「ねぇ、有希、古泉君・・・。 あいつをあそこまで追い詰めたのって・・・あたし・・・?」 「………違う。私のせい」 「涼宮さんのせいなどではありませんよ。 ・・・いささか僕も彼に無理をさせていたかもしれません。 ですが納得がいかない部分が大きすぎませんか? 突然です、ある日突然彼がああなってしまうとは普通考えられませんよ」 「わたしが・・・キョン君を・・・『禁則事項』なのに・・ もう・・・ごめんなさい・・・ごめ・・・」 「朝比奈さんも気に病む必要はありませんよ 何故、彼がああなってしまったのか調べるのと 彼を正気に戻す方法を考えるしかありません 今はそれを優先すべきではないでしょうか?」 「・・・キョン君・・ごめんなさ・・ごめ・・・ごめんなさい・・・」 「・・・長門さん、朝比奈さんと涼宮さんと、あと妹さんもですね。 お願いできますか?急用が入りました」 「……解った」 有希はまず、3人を鶴屋さんの家に連れて行った。 鶴屋さんの所ならば色んな意味で安全だと判断したからだ。 みくるとキョンの妹は泣くだけでまともに歩く事もままなら無い状態。 それにキョンの妹をこの状態のままであの家に1人置いておく事は出来ないからだ。 幸い、鶴屋さんは快く受け容れ。とりあえずは、2人を床で寝かせてくれた。 「深くは聞かないけど何があったのかは教えてくれないかなぁ。 流石のあたしもみくると妹ちゃんがあの状態になってるの理由を聞かないわけにはいかないよっ」 「あたしが・・・キョンを壊しちゃったの・・・だから・・・」 「あのキョン君が壊れた・・・?うーん、あのキョン君がねぇ・・・?」 「あなたに責任は無い。全てはわたしが彼を守りきれなかったせい。 だから彼は重度のストレスにより精神を異常を来たした。 全てわたしの責任……」 「まぁまぁ、有希っこも自分も追い詰めちゃいけないよ。 何が原因なのかあたしはわからないけど・・・なんていうのかな。 キョン君が何かを抱えて、壊れてしまっててもその彼を支えて力になってあげるのが 友達の役目だと思うにょろよ。今は責任とか難しいことを考えるよりも。 キョン君をそっと包んであげるのが一番だと思うにょろよ」 「・・・そうよね、キョンを元に戻してあげないと、そうよね!うん!」 「……」 コクリと、長門は頷いた。 落ち着きを取り戻したハルヒはひとまず自宅に戻った。 その後有希はみくるを鶴屋さんに頼み、キョンの妹を聞いた親の勤め先に送った。 有希はそのままマンションに戻った。 有希は鶴屋さんの家ではああは言ったが、後悔していた。 キョンに言った一言を。自分の今までの行動を。 『…………失望した』 失望され、叱責されるべきは自分だ。 彼を追い詰めた。 彼の悩みに気付けなかった。 彼は私を気遣い、いつも見てくれていたのに・・・。 『…………失望した』 「…そう」 『…………失望した』 「私に」 『…………失望した』 「…………」 有希の携帯に、古泉から電話が来た。 【長門さん、もしもし、僕です。 閉鎖空間が全世界に展開されてもうダメかと思いましたよ。 数は半端じゃなく規模も今までの物とは桁違いでした。 ですが、先ほど突然自己収縮をし全て消えてしまいました。 これは涼宮さんが・・・なるほど、流石鶴屋さんですね。 ですが問題はこれからです、彼をこれからどうするか・・・。 具体的な方法は僕には思いつきません。何か名案はありませんか? そうだ、彼は愛情に飢えてるんですよ!!そう考えるなら納得がいきます。 恐らく彼の心は枯れた川のようになっていると考えられます。 その渇きのストレスを他人に意味も無くあてているのでしょう。 そうとわかれば僕がここで一度彼に最大級の】 プツ 「………」 男は、笑っていた。 計画通りに事が進んでいる。 前々から種を蒔いていた甲斐があった。 これで満足の行ける結果になるだろう。 次の日、キョンを除く4人は放課後SOS団部室に集まっていた。 ハルヒは団長席座りどこかウキウキしたようで。 古泉は合いも変わらず。 みくるはメイド服は着ないでイスに座り俯き。 有希はページもめくらずただ本の一点を見つめて。 「今日はここで解散、みんな帰って良いわよ! あたしはこれから1人でキョンのうちに行くから! 3人は着いて来なくても良いからね」 そう言い残しハルヒは団員を残してダッシュで部室から出て行った。 ハルヒは考えた、キョンに謝ろう、そして抱き締めよう。 きっとそうしたら正気に戻ってくれる、何故かそんな確信があった。 謝って、謝って、心から謝れば、絶対キョンは許してくれる。 許してくれないはずは無い。許してくれるに決まってる。 「だって・・・キョンだもん・・・」 ハルヒはキョンの家につくとキョンの妹に挨拶もせずキョンの部屋に向かった。 ドアを開けようとするがやはり鍵がかかってあかない。 「キョン、昨日はごめんね、あたしが悪かったわ。 ねぇ、だから開けて、謝りたいのよ」 「・・・帰れ、帰ってくれ」 「もうあんたを扱き使ったりなんかしないわ。 今までやった事全部謝る・・・だから・・・」 「あ・・・・・俺は・・・っ!?なんだこれ、逃げろハルヒ、来るな!」 「・・・キョン?」 「ハル・・・に・・・・・・帰ってくれ」 「どうしたのよ?・・・キョン・・・?」 「帰れ」 「開けて、謝らせてよ・・・」 「帰らないと」 「・・・?」 「殺す」 その声は、ハルヒの知っているキョンの声には聞えなかった。 その声は、本気で自分を殺すつもりの声だった。 あぁ、もうキョンはダメなんだ。手遅れなんだ。 もうキョンは今までのキョンじゃないんだ、もうキョンは死んじゃったんだ。 自分が殺しちゃったんだ。キョンを殺したんだ。 ハルヒは、そう悟った。 ハルヒはそのままキョンの家から出て行った。もう二度と来ないと心に誓って。 そもそもどうしてこんな事になってしまったんだろう。 どうしてキョンが壊れてしまわなきゃいけなかったんだろう。 どうしてキョンにもっと優しくしてあげられなかったんだろう。 どうして、どうして。どうして? 「でも・・・全部あたしが悪いわけじゃない・・・」 ハルヒは誰かのせいにしてしまわないと、心が押しつぶされそうに思った。 そう考える自分を、さらに嫌に感じていた。 …そうよ、あたし1人が悪いわけじゃない・・・。 みくるちゃんも、一樹君も・・・そう、有希だって・・・。 有希・・・。有希? そういえばキョンはいつも有希の事を見ていた。 そうよ・・・。有希が悪いのよ・・・・・・・・・。 感情の矛先は有希に向いた。ハルヒは、こう考えた。 キョンはいつも有希の事を見ていた。 それはきっと有希の事を好きだったからだ そして、一週間前有希にその気持ちを伝えたんだ。 でも、有希はキョンを振った。そして、キョンはショックで死んだ。 そうに違いない。そうとしかハルヒは考える事が出来なくなってしまっていた。 「キョン、キョンの苦しみをあたしが晴らしてあげるわ。 そして、あたしもキョンの所に行くわ。 でもその前に有希を・・・有希には・・・」 ハルヒも、壊れた。 だがハルヒは笑っていた。 いつかのように。 ハルヒは学校には普通どおりに登校していた。 前の席は詰められ、ハルヒはキョンの座っていたイスに座る事になった。 クラスメイトは、ハルヒにとって唯一の親しい友達と言えるキョンが学校を辞めてしまって またハルヒが以前のようにイライラして、そのとばっちりが自分にかからないかと戦々恐々だったが、意外にもハルヒはそんな事にはならなかった。 むしろ以前よりもよく笑い、活動的になっていた。 「あたし部活に行くから、またね!」 「じゃあね涼宮さん!」 「それにしても涼宮さん、前からは考えられないくらい変わったよね」 「うんうん、ky・・・誰だっけ?いつも彼女と一緒にいた紐が退学してどうなるかと思ったもん」 「彼がやめてこうなったのなら彼に感謝しなきゃね(笑)」 「名前なんか忘れたけど(笑)」 文芸部室には有希と一樹が居た。 有希は相変わらず分厚い本を読み、一樹は普段とは打って変わり真面目な顔していた。 「思っていたよりも事態は深刻のようですね」 「……彼の存在が北高生徒において異常なまでに希薄化している。 これは学校外でも同様かと推測される」 「これは、涼宮さんが無意識に彼の存在を独占しようとしているから、そうですね? 今までは微量にその兆候がありましたが涼宮さんは踏みとどまっていました。 それは彼女が内面では一般的、常識的理性を持っていたからです。 ですがここで急にその理性のたがが外れた・・・。 これは言ってしまえば巨大ダムが崩れたくらいに危険です。 彼女の理性がもはや意味を成さないとされば。 世界の法則が文字通り変わってしまいかねません」 「……今はその兆候は見られないがその可能性は大」 「ではその危険を回避する方法はないのでしょうか? 例えば長門さんの力で涼宮さんの力に一時的なロックをかけるとか・・・?」 「無理。涼宮ハルヒの能力は私たちの能力とは別次元。 その力の元に干渉し改変することは不可能。 出来たとしても情報統合思念体は許可しない」 「そうですか・・・」 「………それに、私の廃棄も検討されている」 「それはどういうことです? 長門さんまで居なくなってしまってはまた涼宮さんが不安定になって不利なのd」 「私はあれから、何度も涼宮ハルヒに消されかけた」 「消されかけた・・・?涼宮さんが・・・?」 「おそらく涼宮ハルヒは私を邪魔と考えている。 私への興味を無くしている、だから」 「あの涼宮さんが・・・何かの間違いという事は無いんですか?」 「私の存在を消す事を出来るのは情報統合思念体と私と同じインターフェースと涼宮ハルヒのみ」 「ではやはり、情報統合思念体があなたを消そうとしたのでは?または別の派閥が・・・」 「……この話はおしまい。涼宮ハルヒが来る いつものように、そう、いつものように大きな音を立てて部室のドアをハルヒは開けた。 「遅くなってごめーん!あら、今日もみくるちゃんはまだなの? もう、しょうがないわね・・・」 「涼宮さん、今日も元気そうでなによりです」 「一樹君も良い男で結構なことだわ、それと比べて・・・」 ハルヒはこれ以上無いというくらいの憎しみを込めて有希を睨んだ。 一樹はそのハルヒの目を見て、一瞬笑顔を崩してしまったほどだ。 有希はただ黙々と本を読んでいた。 「……」 「有希はあいさつも無しなの?無愛想にも程があるわ。 キョンでも・・・キョンでも一言は言葉をくれてたわよ?」 「………」 「・・・・ねぇ有希」 ハルヒは、自分でもぞっとするくらい冷たい声で言った。 「どうしてあんたがここに居るの?」 一樹はもう有希とハルヒを一緒の場所に居させてはいけないと考えた。 このままだと双方にとって良い方向になど向かわないだろう。 何より、今この空間に居る事で一樹の胃はキリキリと悲鳴を上げていた。 「ねぇ、なんでいるのよ? キョンが死んじゃったのはあんたのせいなのに・・・どうして平然としてるの? 罪悪感の欠片も無いの?・・・もともと感情の少ない子だと思ってたけど・・・。 あんた・・・人間じゃないんじゃない?」 「ちょっと、待ってください、涼宮さん。 長門さんは彼には何も・・・」 「古泉君は黙ってなさい」 「ですg」 「 黙 っ て ろ っ て 言 っ て る で し ょ ! ! 」 「・・・・・・」 「……そう、全て私の責任」 「ならどうしてここにいるの?キョンが居ないSOS団なんていらないわ!! 有希もいらない、どうして消えてくれないの!?」 「……」 有希は本を閉じて部室から音も無く出て行った。その背中にはハルヒの刺すような視線が突き刺さっていた。 有希は部室から出た後、そのまま自宅のマンションに向かった。 その帰路の途中、一樹から携帯に電話がかかった。 【長門さん、先ほどはすみません。 実は、お願いと言ったらいいのでしょうか。忠告とお願い半分です。 今度一切涼宮さんには近づかないで頂けますか? これはあなたのためでもあります。 これ以上長門さんと涼宮さんを接触させてはいけないと僕は判断しました。 上も同意してくれました。 お願いです、涼宮さんの視界に入らないでください。 それが今は一番なんです、えぇそう、彼が居ない以上、今は・・・。 冷たい事を言うようですが・・・そうですか、すいません】 「………そう」 その夜、長門はキョンの豹変の調査をするためキョンの部屋に忍び込んだ。 それは長門にとって最後の任務だった。 この任務が終われば有希は完全に消される予定だった。 自分の体にシールドを施し、キョンの部屋に潜入した。 キョンはベッドの上で体育ずわりをしてずっと虚空を見つめていた。 その表情は、見たことも無いような安らかな笑顔だった。 「………」 やはり、自分が彼をこんなにしてしまったのだ。 そして今日その責任を取って私は消える。 最後に彼の顔を見て、彼の側で消える事は、私には許されるのだろうか。 「…!」 一瞬、キョンの姿がぼやけた。 まるでカメラのピントあわせをする時のように。 瞬間、微量の情報改変を有希は確認した。 その改変パターンに有希は見覚えがあった。 有希はシールドを解き、姿をキョンの前に現した。 「長門・・・こんな所に来ても・・・」 「…………やはりあなたの詰めは甘い」 「・・・ふ、何のことだ?」 「あなたは彼の体を乗っとった、朝倉涼子。 恐らくあなたの目的は彼を乗っ取る事でSOS団の人間関係を破壊し涼宮ハルヒの情報フレアを観測すること」 「やっぱりあなたには」 その瞬間キョンが身体が崩れるように、朝倉涼子がキョンの中から現れた。 「敵わないわね」 「でも今回はあなたも頑張った、でもわかったからには彼を取り戻す」 「あ、それ無理♪」 「私だって無駄に時間かけてきた訳じゃないもの。 あの時一度あなたに消されたとき、私は私を構成する情報の一部をキョン君に仕込んだの。 それからじっくり、私の情報を培養して、彼を構成する情報と入れ替えてたの。 もう彼の痕跡は無いわ、家族もほぼ完全に手中に収めてあるし。 もちろんあなたにばれないようにずっと注意して、ね。 そうそう、この子可愛いかったのよ。あなたの事を・・・あ、これ禁則だったぁ♪」 「……」 「で、どうするの?何をするにももう手遅れよ? 私を消しても、私の勝ちには違い無いもの」 「……」 有希は絶望した。 自分の甘さが、あの時気付いていれば・・・。 キョンを殺さずにすんだ。 そのキョンも、もうこの世の存在していない。 有希は、初めて涙を流した。 いつも自分を見て、気遣い、優しくしてくれ彼は。 図書館に連れてってくれた彼は。図書カードを自分のために作ってくれた彼は。 もう居ない。 朝倉涼子に乗っ取られ、消されてしまった。 自分も知らないうちに、おそらく自覚も無いまま意識が入れ替わり そのまま彼は身体ごと、精神ごとこの世から消えてしまった。 「あら泣いてるの?長門さんが涙を流すとこなんて始めて見ちゃったぁ ねぇ、悲しい?ねぇねぇ、自分の好きな人が死んじゃって悔しい? うふふ、そんな事無いわよね。長門さんにそんな感情なんて元々無いもんね」 「……ち……ぅ……ちが………」 「何が?気のせいでしょう? きっといつかみたいにエラーがたまってバグっちゃってるのよ。 あの時は流石私も焦っちゃった。でも面白い物が見れて楽しかったわ」 もう有希の顔は涙で濡れ、目は真っ赤になっていた。 心は、もう崩れていた。 有希は涙を拭いて、朝倉涼子を睨んだ。 せめて、この女だけは消さないと、気がすまない。 「私は、あなたを消して、私も消える」 「なぁに、敵討ち?そんなの今時流行らないわよ? 大人しく引き下がって学校で本でも読んでたほうがあなたも・・・」 朝倉涼子の足が砂のように輝き、さらさらと崩れていく。 有希が朝倉涼子の情報連結を強制解除したのだ。 「………」 だが、突然朝倉涼子は笑い出した。 まさに上手く行き過ぎてこれほどおかしい事は無いと言うように。 「気付かないの?もしかして私が言ってた事本気で真に受けてた? キョン君の身体を乗っ取っているのは本当だけど。 実際は彼の情報の表面を変質化させてるだけ。 まだ、私の中で生きてるのよ?たまに正気に戻って困ってたんだから。 でもどっちにしろ彼は死ぬ、私と一緒に。 ・・・この情報結合解除はもう手遅れでしょ? せめて最後くらいは彼と話させてあげる・・・うふふ」 腰のあたりまで消えていた朝倉涼子の上半身が、キョンの姿に変わる。 「………!!」 「長門・・・悪かった・・・」 そこには彼が戻ってきた。 間違い無い、本物の彼がここにいる。 でも、またすぎに消えてしまう。 私が消す。 キョンは有希をじっと見つめていた。 その眼差しはまるで娘を見るような優しいものだった。 「長門、お前が気に病む必要は無いぞ。 俺が油断してただけだからな。 ・・・お前には辛い思いをさせて本当にすまない。 これだけは言わせてくれ。 俺はお前たちと居て迷惑だなんて思ったことは一度も無いぞ。 確かに色々と面倒ごとには巻き込まれ方かもしれん。 だがそれは俺だって自分から首を突っ込んでいったからだ。 ・・・本当にごめんな長門。 お前にはやっぱり最後まで世話をかけてばっかりだな・・・」 「嫌………駄目…」 「どうにもこうにもならないようだしな、まぁ、元々ここまでだったんだろう。 後悔は無い事も無いが・・・あ、お前を責めてるわけじゃないからな!」 有希はもう胸までしか無いキョンを抱き締め、耳元で何度も何度も謝った。 「だからお前が気に病むな・・・頼む」 キョンも有希を抱き締め返そうとするが腕も砂ようにさらさらと崩れた。 有希はそうしてるうちも色々な手を打っていたがどれもキョンが崩れるのを止める事は出来なかった。 恐らく朝倉涼子自身がこの情報結合解除をキャンセルできないようにロックしてあるのだろう。 有希は、いっその事自分も消えてしまおうと考えた。 それくらいの事は簡単に出来た。 有希の身体はザラザラとキョンが崩れるよりも早いスピードで崩れていった。 「・・・!?長門、馬鹿よせ!」 「大丈夫……」 そう言い、有希はもう首だけのキョンの唇に自分の唇を合わせた。 「・・・・・・」 キョンは有希の意図を理解し。 思っていたよりもずっとやわらかいな、という感触を感じた。 そして白く輝く、まるで白雪姫のような有希を見て、消えた。 有希はキョンだった砂を抱き締め。 どこか笑顔に見える表情のまま崩れて消えた。 最後に、最後だからこそ有希は笑えたのかもしれない。 鍵は消えた。まさに消失した。 もう二度と扉は開く事はないだろう。 鍵は消え、そして扉も開く事無く壊れてしまった。 いつか新しい鍵が表れようとも、その扉は開く事は無い、永遠に。 そう、ハルヒが、望んだからだ。 ----おわり----
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1. 俺が北高に入学し、SOS団とかいう世にも奇妙な団体に入団してから、いや、拉致されてからと言ったほうが正しいだろうか、まあそんな感じで早々と時間は過ぎ去り、二回目の夏休みを迎えていた。その間にもいろいろと、古泉発案の第二回SOS団夏合宿やら、その古泉が真っ青になり、朝比奈さんがおろおろとし、長門が奔走しまわった事件などがあったのだが、ここでは語らないでおこう。それはまたいつか他の機会があれば話そうとおもう。 さて、俺は今、クーラーがきいた自室で朝から久々の惰眠を貪っている。 両親と妹は商店街の抽選で当たったとかいう三泊四日温泉旅行の三名様用チケットとやらを使って今朝早くから出かけてしまった。俺を置いてな。 全く酷い家族だぜ。母親いわく、あんたは涼宮さん達と合宿に行ったでしょうが。だったらあんたは行かなくてよし、なんだそうだ。 悔しいから見送りなんてしないで寝てようとしたのだが、朝早くから妹のフライングボディープレスを喰らって起こされ、結局見送りをする羽目になった。 何が悲しくて自分が行かない家族旅行の見送りなどせねばならんのだ。 はぁ。それにしても何も変わってないな、マイシスターよ。 学年が一つ上がって六年生になったんだ。そろそろ毎朝の過激な起こし方はやめてくれないか?お前だって成長して大きくなってるんだぞ、お兄ちゃんの身体がそのうち壊れちまうじゃないか。起こしてくれるのは助かるがもっと静かに起こしてくれ。少しはミヨキチでも見習ったらどうだ? はぁ。それにしても何にも分かってないな、マイマザーよ。 合宿とは名目上のものでしかないのが何故わからんのだ。終業式当日にいきなり明日から合宿と言われ、強制連行同様に連れて行かれたんだぞ。去年もそうだったではないか。 これで俺の長い夏休みの最初の数日くらいは誰にも文句を言われず昼過ぎまで寝続ける日々を送ろうという周到な計画は二年連続で失敗に終わった。 ・・・予想していたことだがな。ハルヒのことだ、どうせあいつは夏休み初日から厄介事を持ってくるのだろう。そう思って何も予定を入れてなかった自分もいたりした。万が一予定を入れてたとしても合宿に強制連行されていたと思うが。 そうそう、言い忘れていたが今日はSOS団の第二回夏合宿の次の日なのだ。 どうやらあのハルヒでさえ少しは来たらしく、 「明日と明後日はSOS団はお休みよ。だからこの合宿の疲れを完全に取り去っちゃいなさい。明々後日からは忙しいんだからねっ」 と解散前に言っていた。 「どうせキョンは寝てるだけなんでしょ?だったらあんたはこの二日間で宿題を全部終わらせときなさい。去年みたいなことになったらあんた死刑じゃ済まさないわよ?」 というありがたいお言葉まで頂戴したがな。生憎俺は宿題は最後の最後までとっておくタイプなんだ。知ってるか?宿題ってのは出すまでが宿題の期間なんだよ。だから提出前に国木田あたりにでもちょちょっと写させてもらえばいいんだ。今年の宿題はそこまで多いもんでもないからな。ん?谷口?そんなの俺の知ったこっちゃねえや。あいつのことだからどうせ宿題は学校にでも置いてあるんだろ。終業式の帰りにまるで中に何も入っていないかのように鞄を振り回してたしな。 まあそんなわけで俺は一言多い団長様からのお言葉にあやかって数日遅れののどかな生活を送っているわけだ。あのハルヒが休みをくれたんだ。これを棒に振ったらもったいない。 誰も邪魔することのない平和な朝。これこそが俺の求めていたものである。 そのなかでもやっぱりクーラー+柔らか布団は最高だな。俺はこれのために夏休みを迎えたといっても過言ではないだろう。できることならば、この平穏な時間がずっと続いてほしいものだ。 よし、午前中はずっと布団の中で過ごそう。幸い朝飯は見送りのときに食っちまったからな。シャミセンはいるが・・・そうか、お前もここで寝たいか。うんうん、お前も分かる奴だなぁ。それでは一緒に寝ようではないか、とまどろみ始めたころだった。 とんとん。何者かが俺の肩を小さく叩く。それが誰かなんて考えるまでもない。 こらシャミセン、やめなさい。俺は寝たいんだ。 とんとん。なんなんだよ、しつこいなあ。そう思って寝返りを打つと、何か暖かくて毛むくじゃらなものの中に顔を突っ込ませてしまった。 むっとして目を開けるとそこには丸くなったシャミセンが。 俺は一気に眠気がすっ飛んだ。 考えてみろ。俺とシャミセンしかいないこの家で叩かれた肩。しかしシャミセンは俺の横でぐーすか寝ているときた。 じゃあ・・・・・・ 一体俺の肩を叩いているのは誰なんだ? そう考えてるときに声が聞こえてきた。 俺はその言葉に一番驚かされたね。いや、誰だって驚くだろう。全く実に覚えがないのにこんな言葉を聞かされた日にはな。 「…ねぇ、おきてよ?おとーさん!」 イマナントイッタ? 「おきてってば、おとーさん」 恐る恐る声のする方向へ顔を向ける。 ・・・誰だ、こいつ。そこには白いワンピースを着た髪の長い見知らぬ女の子が立っていた。 いや、正確言うと、どっかで見たことあるような気がするんだが・・・ 駄目だ。思い出せん。 それはいいとしてだな。これはどういうことだ?一体何が起きている?この状況が分かる奴、全部説明しろ。 ねえ、君はどこから入ってきたのかな?どうしてここにいるのかな?パパとママが心配してるから早く帰りなさい。それと俺とどっかで会った事あるか? 「なにいってるの?おとーさん。ここおとーさんのおうちでしょ?」 ・・・・・・へ?どうなってるんだ? 「ちゃんとしてよね、もう」 あぁ。そういうことか。きっと俺が寝てる間に誰かに襲われるか襲うかしてだな・・・ どっかで見たことあるのはその相手の面影なんだな、うん。 ・・・・・・ってそんなことあるか。あれだ、あれ。どうやらハルヒの神様パワーとやらで世界が改変されちまったらしい。この歳で父親だなんてありえないからな。ネタが分かっちまえばもう何も驚くことはない。さっさと長門に連絡してどうすればいいのか聞くとしよう。やれやれ、結局俺には心休まる日というのは無いってことなのかねえ。 「おとーさん、なんかへんだよ?どうしたの?」 心配そうに聞いてくるマイドーター。どうせもとに戻ったらこいつは消えちまうんだ。少しの間だが可愛がってやるとしよう。 「ん?何でもないぞ。娘よ。」 そう言って頭をぽんぽんやさしく叩いてやると、猫を膝に抱いて背中を撫でているような笑顔で笑った。はて、なんでだろう。何故か脇腹が痛むんだが。 まあいいか、ひとまず長門に電話しよう。 携帯の電話帳から長門の自宅番号を選んで電話をかける。1コールもしないうちに長門がでた。いつも思うことなのだが、こいつはいったいどんだけ電話に出るのが早いんだ?まさか家ではいつも電話の前にいるんじゃないのか? 「もしもし、俺だが長門か?」 「…そう。あなたが危惧しているような世界改変は起こっていない」 そうか、起こってないのか・・・ってちょっと待てよ?じゃあこいつは何なんだ?まさか本当に俺の娘だとでもいうのか?とういうか長門よ。何故お前は俺がまだ聞いてもいない事の答えを言えるんだ?もしかしてこいつは人の心が読めるのではないだろうか? 「…大丈夫。そこにいるのは貴方の子供ではない」 そうか、お前がそう言うのなら確実だな。だが長門よ。人の心を勝手に読むのはよそうな。俺は娘のことはまだ一言もお前に言っていないぞ。 「…善処する」 「んで、長門よ。お前は俺にここにいるこの子は俺の子ではないといったよな?じゃあ誰なんだ?朝比奈さんみたく未来からきたのか?」 ぽんぽんとベッドに座って電話をかけている俺の横でシャミセンをいじっている女の子の腰の辺りまでありそうな長い髪の毛を撫ぜてる。するとその子はふふっと笑った。うん、癒される。俺も親になるんだったらこんな娘を持ちたいものだ。 「…そうではない。付け加えるならば古泉一樹関連の事柄でもない」 ハルヒでも朝比奈さんでも古泉でもないだと?じゃあ一体なんで俺のところにいるんだ? 「…電話では情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。だからその子を連れてわたしのマンションに来て欲しい」 分かった。すぐに行くから待ってろよ。 「…それと」 なんだ?長門でも言い忘れるようなことがあるのか? 「…なんでもない」 お前がそういうふうに言うなんてめずらしいこともあるもんなんだな。なんだか声に少し緊張した色が混じっていた気もするが、本人が言いたくないのなら仕方ない。気になるがマンションに行くまで我慢するとしよう。 「…それでは待っている」 分かった。またお前に助けられちまったな。 「…いい。今回のことはわたしも原因因子の一つだから」 どういうことだ?それは。まあマンションで聞けばいいか。 「それじゃあ切るぞ」 「…分かった」 そう言うと俺は電話を切った。今日の長門はどこかおかしい。三点リーダはあいつの十八番だが、今の会話の中にはありすぎではないだろうか?何か悩んでいるようにも見えたが・・・。声だけではちゃんとは分からん。 「ねー、おとーさん、なんのおでんわだったの?」 ん。何でもないぞ。だがちょっと用事ができちまった。 「ごようじ?おとーさんどこかおでかけしちゃうの?」 そう悲しそうな顔をするな。ちゃんとお前も連れていってやるからな。 「ほんとに?ふふっ。おでかけだ~!」 さっきの顔から一変して笑顔になった。変わり身の早い奴だ。そういえば妹もこのくらいの時はこんな感じだったな。もっとも、今もそう大差は無いように思えるが。兄として心配極まりないぞ。 「ちょっとリビングで待ってなさい。俺はまだ着替えてないし、行く準備ができてないからな」 「は~い。リビングでまってるね」 そう言うとたたたっと走っていった。こら、女の子が廊下を走っちゃいけません。 「は~い」 返事が聞こえてからは走る音が聞こえなくなった。うん。よろしい。聞き分けのいい子だ。 妹よ。お前もこれくらい聞き分けがよければいいのだが、それは無理な相談なのだろうか? さて、着替えるとするか。 俺はパジャマを脱いで、ジーンズと半そでのシャツを装着する。準備完了。 ・・・我ながら早いな。それじゃ、出かけるか。さらば、布団よ。あの子には悪いがこのままじゃいろいろとまずいからな。早くなんとかしないと。 着替えが終わった俺はリビングに向かった。部屋に入ると、我が娘はソファーで姿勢を正して静かにちょこんと座っていた。 「あ、やっときた!どう?おとーさん。わたし、ちゃんとおんなのこらしくできてた?」 俺がリビングに入るとてくてくと近づいてきた。さっき言ったことを気にしてたのか?うん。ちゃんとできてたぞ。よしよし、いい子だ。 そう言って頭をくしゃくしゃと撫でてやる。あ、ちょっと照れてる。さっきも言ったがこんな娘を俺も持ちたいもんだ。まあ仮にも今は俺の娘なんだが。 「じゃ、出かけるぞ」 「うんっ!」 元気いっぱいに答える娘。こっちまで元気になってくる。 ・・・あれ?もしかして俺、親馬鹿になってる?いやいや、そんなことないって。多分。 そんなわけで家を出た俺たち。長門のマンションへは歩いていくことにした。自転車のほうが早いんだが危ないからな。もし振り落とされでもしたら大変だ。 それにしても暑い。なんせ今は夏の昼近く。道にはほとんど人影がない。それはそれで好都合なんだが。夏は暑いもんなのよ、とどっかの団長様は言っていたが、まさかこの暑さもハルヒが作り出してるんじゃないだろうな。もしそうだとしたら迷惑極まりない。さっさと止めさせなければ。 なんて考えていると、 「・・・ねぇ、おとーさん、あとどのくらい?」 という言葉で思考がこちら側に戻ってきた。みると我が娘がぐったりしてるではないか! これはピィィィィンチッ!!!と某教育番組の黄色いタイツ男のように心の中で叫ぶと娘をそばの公園の日陰のベンチに置いて近くの自販機まで全力疾走。俺の分と娘の分の二本のスポーツドリンクを買うと疾風のようにもとの場所へ戻った。別にこのくらい普通だよな?全然親馬鹿じゃないよな? そんな事は置いといて娘にスポドリを渡すと、ありがとー、ちょっと疲れた笑顔で言って受け取った。俺も飲むとするか。 ゴクゴクゴク。ぷっはあ!!!暑いなかでスポドリ一気飲み。家の中やスポーツ後に飲むのもいいが、これはこれで旨い。疲れてればなおさらだ。 早々と飲み終わった俺に対して娘は缶を両手で抱えてコクコクと少しずつ飲んでいる。 そういえば昔、親父とまだ小さかった妹と一緒に出かけたときに今と似たような場面があったが、確かあの時の親父がなんともいえない表情をしていたな。今ならそれも分かるような気がする。なんか癒されるというか、和むというか、まあなんとも言い難い感じだ。 だから俺もあのときの親父と同じことを言ってやろうと思う。 「さ、父ちゃんの肩に乗れ。疲れたろ?肩車してやるぞ」 と言ってしゃがみこむ。じゃないと乗れないからな。 「え?いいの?おとーさん、つかれちゃわない?」 子供が親の心配をするもんじゃありません。こうみえてもおとーさん、若いんだぞ。なんてったってまだ十七歳だからな。 「うんっ。分かった。ありがとーね、おとーさん」 よし、じゃあさっさと乗りなさい。ほれ、その缶、一旦こっちによこしな。乗るときに邪魔だろ? 「いいか?立つぞ。・・・よっこらせっと」 そう言って俺は立ち上がった。ここで一つ誤解して欲しくないところがあるのだが、俺は決して親父くさいわけではない。ただ暑いから自然と口に出ちまっただけだ。そこんところを間違えないでほしいね。・・・って俺は誰に説明してるんだか。 「それじゃ、行くとするか」 おー、という娘の声援を耳に俺は長門のマンションまでの道のりをさっきよりも少し早足で、かつ上に乗っている娘が落ちないように注意しながら歩き出した。 それからしばらく何の他愛も無い話をしながら歩みを進めたわけだが、ん?どんな話をしたかだって?そりゃあ相手が小さい子だからな。あの雲はなになにに似てる、とか、これはなんて名前か、とかまあそんなもんだ。特筆すべきことは無かったように思う。おとーさんおとーさんと連呼されていれてるのをどこかの奥さんに聞かれて白い眼で見られたのが数回あったこと以外はな。 はぁ、こんなのがハルヒに知られた日には、 「あんた、死刑だから」 の一言で殺されちまうんだろうな。もしかしたら、何やってんのよ、このロリキョン!かもしれないが。どっちにしても俺の死は免れないだろう。俺ができることはこれ以上誰かに見られないうちに長門のマンションにたどりつくことだけだ。 頼むぞ、仏様。俺を導いてくれ。普通ならばここは神に祈るところだとおもうのだが、古泉いわく、神とやらはハルヒらしいからな。神には祈れん。ばれちまったら大変だ。 とまあ娘と適当に会話をしつつ、そんな事を漠然と考えてるうちに長門のマンションまでついていた。ウィーン、と音をならして自動ドアが開くのと同時に冷たい空気が流れ込んでくる。ふう、涼しい。やっぱりクーラーはいいなぁ。 「ねぇ、おとーさん。いつまでかたぐるましてるの?もうついちゃったよ?」 ああ、すまん。すっかり忘れてた。今降ろしてやるからちょっと待ってなさい。 と言ってしゃがみ、中腰くらいになったときだった。 「とうっ」 という掛け声とともに俺の肩を蹴って後ろに飛び降りた。何ぃ!?俺を踏み台にした!?・・・じゃなくって、 「危ないだろうが。怪我でもしたらどうする。そんなことやっちゃいけません!」 振り返ってみると、一、二メートルくらい後ろにくったくのない笑顔を浮かべて立っていた。着地の瞬間は見ていないが、転んだりしてないように思う。 まあひとまず一応は軽くでも叱っておかないとな。どっかの誰かさんみたいになっちまう。 「ごめんなさい。でもざんねん。おとーさん、おどろくとおもったのにな」 十分驚いたぞ。この運動能力は目を見張るものがあるからな。その証拠に、すでに俺よりいいんじゃないか、とか、この歳でこんなに飛べるなんて人間じゃないみたいだな、とか、思っちまったし。 いかんいかん、ここに来た目的を忘れてた。俺は708号室を呼び出した。ぷつん、という相手がインターホンに出たことを示す音を確認すると、マイクに言った。 「長門か、俺だ。入れてもらっていいか?」 「…入って」 かしゃんと音がして玄関の鍵が開く。興味津々、といった感じで辺りをきょろきょろしている娘に、行くぞ、と声をかけ、ちょこちょことこっちにくるのを確認してからエレベーターに乗り込む。 「今から父ちゃん大切なお話があるから、その間ちゃんといい子にしてるんだぞ」 「うん。分かった」 「いい子にできてたらあとでアイス買ってやるからな」 そういうと目を輝かせてさっきより元気に、うんっ、と言って膝の前に手をそろえて気をつけの姿勢をし始めた。おいおい、まだ早いぞ。 チーン、と目的の階に到着したことを知らせる電子音がして、エレベーターから出た。 708、708は、と。あ、ここだここ。ドアのネームプレートに長門有希と書かれているのを確認すると、ドアの横についているチャイムを鳴らす。 ピンポーン。長門、俺だ。そういうが早いか、かちゃんとドアの鍵が開き、中から小柄な宇宙人が出てきた。 「…入って」 とデジャビューかと疑いたくなる返事を聞いて、うながされるままに俺は長門の部屋へ上がりこんだ。そういえば、俺が初めて長門の家に呼ばれてからずいぶんたつが、これで通算何度目なのだろうか?数えてみると結構な数になる気がするが・・・まあいいか。 娘のほうを見ると、動きが少しぎこちないようだった。そりゃそうだ。いきなり知らない人の家に連れてこられたんだからな。男だったら気にせずに騒いでいたかもしれんが、こいつは女の子だ。ちなみに俺がガキのころは騒いでいた・・・・・ような気がする。 なんて少し懐かしいことを考えながら玄関に入り、靴を脱いで部屋に上がると、今までどおりに俺はちゃぶ台へと進んだ。長門が話しをするときは大抵このちゃぶ台だからな。 「なぁ。」 後ろにいる長門に振り向きながら話しかける。 「こいつはどうすんだ?違う部屋に連れて行ったほうがよくないか?それとも一緒に話を聞かせてもかまわんのか?」 「どちらでもかまわない。恐らく彼女の今の状態では恐らく理解することが不可能であると推測される」 あのですね、長門さん。いつも普通に理解できない俺はどうすればいいのでしょうか? 「………」 長門は少し困ったような顔をした。はい、すみませんでした。俺は、心の中で手を合わせてそっと謝りながらちゃぶ台の前に座った。 さてと、こいつはどうするかな。俺の横に正座している娘をみる。ちゃんと手をそろえて膝の上に乗せ、唇を真一文字に結んで少し下を向いている。やっぱりいっちょまえに緊張してたのか。なら少しその緊張をほぐしてやるか。俺は今一度頭をくしゃくしゃと撫でてやる。家で撫でたときにうれしそうにしてたからな。きっと頭を撫でられるのが好きなんだろう。案の定娘は俺のほうを向いてにこっと笑い、落ち着いたようだった。 本題に入ろうと思って長門のほうを向くと、長門と目が合った。 「どうした?そんな珍しい光景か?」 「……なんでもない」 どうしたんだ、こいつ。長門鑑定家を自称する俺でもその目から真意は読み取れなかった。 もしこれが妹だったら羨ましがってるんだろうが、流石に長門でそれはないだろう。うーん、俺もまだまだ修行が足りないな。おっと、話が脱線しちまった。 「んで、話ってのは何なんだ?」 「……………。」 少し話しにくそうな顔をしてお得意の三点リーダを放つ。俺は俺が娘を撫でてやっていた間に入れてくれたのであろうお茶をすすりながら返答を待った。ずずず・・・。おっ、こいつまた腕を上げたな。もう少しで朝比奈印のお茶レベルになるのではないだろうか。 「…情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。でもできるだけ簡単に離すから聞いて」 長門の言葉で我に返る。おう。いいぞ。何でも聞いてやるよ。俺だって伊達に今までSOS団やってる訳じゃないんだ。多少のことでは驚かんぞ。まあ長門が俺個人に話をするときはほとんどが凄い代物なんだがな。 「…情報統合思念体全体の意思として、朝倉涼子の再構成が決定した」 脳裏に一瞬ナイフを俺の腹にねじ込んできたときの冷笑を浮かべた朝倉の顔が浮かび上がる。冗談じゃない。きっと今のは俺の聞き間違いだ。そうに違いない。 「すまんな、よく聞こえなかった。悪いがもう一度だけ言ってもらえるか?」 「情報統合思念体全体の意思として、朝倉涼子の再構成が決定した」 聞き返して得られたものは冷酷な現実だった。あの殺人鬼・朝倉が復活する。 そう考えたとたん、向こうの世界で刺された脇腹に鈍い痛みが走り、俺はうっと声をあげて顔をしかめた。ちょんちょん、と俺の腕がつつかれる感触がし、その方向を向くとそこには娘が不安そうな顔をしていた。 大丈夫だ、ありがとな、という意味をこめて微笑を浮かべると、娘もそれを理解したのか手を引っ込めて目線をもう一度自分の膝に向ける。ほんとありがとな。助かった。 「大丈夫?」 長門のその目に俺を心配しているようなオーラが宿っていた。お前もありがとな、長門。 「もう大丈夫だ。続けてくれ」 コクッと頷くと淡々と話を再開した。 「朝倉涼子は優秀なインターフェイス。情報操作能力はわたしに少し劣るものの、戦闘能力に関して言うならばほぼ互角をいっても差し障りは無い。それゆえバックアップとしての価値はかなり高いクラス。去年の冬の山荘での事件も朝倉涼子が存在していればすぐに解決できたはず。それに今のわたしにはバックアップが存在しない。天蓋領域のインターフェイスがこの時間平面上に存在する今、それはとても危険。そう考えて情報総合思念体は朝倉涼子を再構成することにした」 つまりだ、おまえの手助けのために復活する、ということか? 「その危険というのはわたしだけでなく涼宮ハルヒやあなたにも及ぶ可能性がある。もしそのような事態が起きたときにわたしが自立行動不能の場合の保険、という意味も含まれている」 でもどうして朝倉なんだ?喜緑さんや他のインターフェイスとやらじゃ駄目なのか? 「わたしを除いて一番あなたや涼宮ハルヒに近いインターフェイスは朝倉涼子。彼女が急に戻ってくれば恐らく涼宮ハルヒは強い興味を示し、観察を始めるはず。そうなればこちらも観察が楽になる、というのが情報統合思念体の考え。それに穏健派は常に一定の距離を保つことが義務付けられているので緻密な交流を良しとしない」 そうなのか・・・。んで、一つ聞かせてもらえるか?朝倉はいつ復活するんだ? 「もう再構成は済んでいる」 「なんだって!?どこだ!あいつはどこにいるんだ!?」 「おとーさん、落ち着いて。おねーちゃんがこわがってるよ?」 娘の言葉で正気に返る。どうやら俺は興奮のあまり、長門に掴みかかって大声で叫んでいたようだ。大丈夫か、長門。本当にスマン。お前に当り散らすなんてお門違いもいい所だな。 「わたしは大丈夫。あなたも気にしないで」 お、おう。そうは言っても気になるもんなんだが。 「改めて聞かせてもらうが、結局朝倉は今どこにいるんだ?以前にあんなことがあったから気が気じゃないんだが」 「彼女はここにいる」 そう言って長門は一旦口を閉じた。俺はごくりと唾を飲み込んだ。 「朝倉涼子は………」 言いかけてもう一度口を閉じた長門の三点リーダの時間が何時間にも感じられる。実際は十秒あるかないかなんだろうが、今の俺にはその何十倍もの時間が過ぎているように思われた。 突如長門が腕を上げてある一点を指差す。まずその指を見て、次に指の指す方向に視線を移していく。そしてその直線はあるものにぶつかったのだ。それは俺の思考能力を奪うのには十分な衝撃を持っていた。信じたくはなかった。だが、次の長門の言葉の前に、俺はただ呆然と眺めるしかできなくなってしまったんだ。 「…………朝倉涼子はその子」 プロローグへ 第二章へ
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響け終焉の笛 ◆FbVNUaeKtI ギガゾンビの声が途絶えてから、数刻ほどの後。 グリフィスはいまだ、遊園地内で体を休めていた。 「身動きの取れない者、か」 先程の放送で死者の名や禁止区域と共に告げられた、動けない状態にある参加者の存在。 足に怪我を負ったのか、意識を失ってしまっているのか・・・ どちらの理由にしろ、その人物を目指して他の参加者達が集まる可能性は高い。 自分のように仲間を探す者や博愛精神にあふれた者、そして殺し合いに乗った者までも。 現に先程、遊園地の北―おそらくは放送で言っていたE-4の方向から、巨大な爆発音等が響いた。 そのような場所に、策も無く手馴れた武器も無い状態で赴くつもりは、 たとえ、そこにキャスカやガッツが居るのだとしても、グリフィスにはなかった。 さて、この二回目の放送により参加者の大移動・・・・・・特に禁止エリアへと向かう動きが起こるはずだ。 つまり北方にE-4、東方にF-8がある遊園地近辺は、そこを目指す者が通過する可能性が高い。 さらに、今しがたの大砲を使用したような数度の爆発音。 命を捨てようと考えないかぎり、その音を聞いたものはE-4方面に行くのを避けようとするはずだ。 西に行くにしろ東に行くにしろ、今しがた爆発の起こった場所を大きく迂回しようとすると、 山側を越えてゆくか海岸線側を抜ける可能性が必然的に高くなる。 ならば、ここで他の参加者を待ち伏せたほうが効率がいい。 ではどこで待ち伏せる? 西門や北門はE-4に近すぎる。あの爆発を起こした者が現れては本末転倒だ。 やはりF-8側に近い東門か、もしくは南の防波堤で西方の島からの来訪者を待つか。 しばらく悩んだ末に、南方へと足を向ける。 一応、防波堤を確認し、誰も居ないようならば東門へむかう事にしたのだ。 『おそらく誰も居ないだろうがな』というグリフィスの考えをよそに。 防波堤の上を歩く少女の姿を彼が発見したのは、海岸に到着後、すぐの事だった。 そして待ち続ける事、一時間。 「ようやくの到着か」 桃色の髪をした少女が防波堤を渡りきり現れる。 歳は十代前半だろうか。黒い外套を羽織ったその少女は、 まるで大切な物を守るように――実際、彼女にとっては大切なのだろうが――男の首を抱きかかえていた。 掛け替えのない者。愛する者の死に、精神が耐えられなかったか。 狂気しか感じないその様は、グリフィスにとっては珍しくもない光景だった。 それよりも目を引いたのはもう一方。少女が反対の手に握り締めた、無骨な武具。 『戦槌か。少し小さいが・・・・・・無いよりはましか』 思案は一瞬。銃を構えながら、建物の影からその身を曝けだす。 そして、首にしきりに話しかけながら歩く、鉄槌を持った少女に声をかけた。 「少し尋ねたい事がある」 突然の言葉に驚き、振り向く少女。少し浮かせかけた槌をグリフィスは手で制する。 「女を一人探している。褐色の肌に黒い・・・」 「知らない」 そっけない言葉に軽く苦笑すると、その態度が気に障ったのか、幾分硬化した語調で少女は言葉を続けた。 「朝倉涼子って女を知ってる?」 「悪いが、知らないな」 「そう・・・」 しばらくの沈黙の後、少女が再び口を開く。 「じゃあ、死になさい」 言葉と共に、少女の目前に鉄球が現れる。 危険を感じたグリフィスが引き金を引くのと、中空に浮いたそれが動き始めたのは、ほぼ同時だった。 広大な遊園地に今日、幾度目かの爆裂音が響く。 繰り返されるその震えを間近に感じながら、グリフィスは銃を片手に駆ける。 放たれた鉄球はUZIの弾幕を使い防いだものの、その初撃は彼の皮膚を炙り、両耳の聴力を低下させていた。 新たに起こった爆発により、空気が震える。 『その一撃一撃が砲弾並の威力か・・・あの、“不死のゾッド”に負けず劣らずの化け物だな』 心中でそう呟きながらも、グリフィスの顔には笑みが浮かぶ。 「おもしろい、実におもしろいな、ここは!」 煙の向こうに気配を感じ、叫びと共に銃弾を放つ。 連射された鋼鉄は黒煙を貫き、穴を穿ち、その向こうに居る者へと襲い掛かった。 「フライ!」 しかし、その弾丸は敢え無くかわされる。少女が中空へと飛翔したのだ。 「ほう、空まで飛べるのか・・・」 呟きは、少女にまで届くことなく消える。 飛来してくる少女に、グリフィスは後退しながら銃撃を加えていく。 が、同じく放たれた鉄の砲弾により、その弾丸は爆炎と共に対消滅した。 そして、それに続けて、薬莢の排出が軽い音を残して停止する。 舌打ちと共に再び駆ける。彼の笑みはいまだ、消えていなかった。 やがて、その進行方向に一棟の建物が現れる。 グリフィスはそれが何の建物かを確認する事もなく、その内へと飛び込んでいった。 銀髪の男が建造物に逃げ込むのを確認し、ルイズは静かに建物の入り口近くに降り立った。 どうやら、ここは何らかの施設らしい。 出入り口にはドレス姿の娘と共に、“白雪姫のコースター”と大きく書かれた看板が下げられている。 「どうする、サイト?」 建物の扉をじっと見つめながら、ルイズは愛しい少年に問いかけた。 ・・・無論、返事はない。けれども、彼女にはその返事が聞こえた気がした。 「そうだよね、深追いはしないんだったよね」 少年の身をひしと抱きしめながら、小さく呟く。 彼女の目的はあくまでも、朝倉涼子だ。こんな所で、時間を費やす必要は無い。 おそらく、この中で待ち伏せしているのだろうあの男に、無駄に付き合う必要も無いのだ。 「・・・これごと壊しちゃおっか。朝に壊した建物みたいに」 ルイズは再度の問いかけ・・・呟きと共に手にした鉄槌を振るう。 現れた鉄球は、まるで砲弾のようにドレスを着た娘へと襲い掛かった。 数分、いや数秒もしないうちに、一階建ての建物は瓦礫の山へと姿を変えた。 「じゃ、行こうか、サイト」 腕の中の少年に声をかけて、ルイズはその場を離れようと身を翻し・・・ 「フライ!」 叫びと同時に飛翔、背後から子供ほどの大きさをした物体――小人が飛来し、地面に打ち付けられる。 振り返りざまに、瓦礫の上に出現した者へ向けてシュワルベフリーゲンを放つ。 高速で虚空を走る鋼鉄が、唸りをあげて頂上の人影――白雪姫の人形を襲い、無残な姿へと変える。 ルイズの表情が驚きに変わると同時、その真下にある穴――コースターの入り口から男が現れた。 男は手にした長い紐状の何かを、空中に居る彼女へと向けて投げつける。 先端に人形の腕を巻きつけたそれは、少女の身体へと絡みつき、そして宙空の一点でその端を静止させた。 「残念だったな、ここでは俺も空を飛べる」 言葉と同時に、グリフィスは飛ぶ。目指すは手前に見える小さな広場。 その中心へと降り立ち、そのままロープを引く。 そして、空中に固定された端が外れると同時、少女の身を地面へと引き擦り落とす。 「ガッ!」 地面に叩きつけられた衝撃に、少女から悲鳴が上がった。 手にしていたものはすべて飛び散り、その表情は絶望へと変わる。 だが、グリフィスはまだ、その手を緩めない。 勢いをつけてターザンロープを振り回すと、遠心力を乗せたまま樹木へと叩きつけた。 全身を襲う二度目の衝撃に、少女はかっと目を見開き・・・そして、そのまま意識を失った。 「終わったか。だが・・・これでは、予定を変更せざるを得ないな」 焼け野原と化し、黒煙の上がる遊園地を見ながら、小さく呟く。 そして、しばらくの思案の後・・・グリフィスは、少女の落とした荷物を拾い集め始めた。 「う・・・あ・・・?」 かすかな肌寒さを感じ目を覚ます。 ルイズの目の前には、オレンジに染まった天井があった。 横たわっていたソファーから起き上がり、周囲を見回す。 そこは夕日の差し込む、狭い部屋だった。もちろん、学院の自分の部屋ではない。 もしかすると、すべて悪い夢だったのかもしれない。 そんな淡い期待が裏切られ、視線を落とす。 「っ!」 そして彼女はようやく、肌寒さを感じた理由に気が付いた。 身につけていたはずのマントとブラウスが消えていた。 スカートは身につけているものの、上半身は申し訳程度に巻きついた白い布地だけ。 露出した肩が部屋の空気に直接あたり、ルイズは身を震わせた。 「どうやら、気が付いたようだな」 部屋の片隅から、突如として響いた声に慌てて振り返る。 そこには、笑みを浮かべた銀髪の男が居た。 「ころす!ころしてや・・・」 思わずあげた怒声は、身体を貫く痛みに妨げられる。 自らの身を抱きしめ苦しむルイズに、男の言葉が届く。 「無理に動かさないほうがいいぞ。骨は折れていないが、全身を打撲している」 楽しそうにそう言いながら、男は足元の鞄を開ける。 そして、その中から水を取り出すと、ルイズにむかって投げてよこす。 目の前に落ちたそれを見ることもせず、少女は男に向けて叫んだ。 「サイトはどこ? サイトを返して!」 「・・・ああ、“彼”なら俺が大切に預かっている」 言葉と共に、男は鞄を指し示す。 その姿を見ると同時に、ルイズは立ち上がり・・・痛みに声を上げ、再びうずくまる。 そんな彼女の様子を見つめながら、男は手にした物を投げる。 ルイズの目前に落ちたもの、それは緋色の鉄槌。 それを即座に拾い上げ、ふらつきながら構える。 そして、目の前の男に向かってシュワルベフリーゲンを放とうとして・・・ 男が、鞄を胸元にまで持ち上げている事に気が付いた。 持ち上げていた鉄槌が、地面へと落ちる。座り込んだルイズに向かい、男が言葉を紡いだ。 「交換条件だ、俺の物として働け」 男の――グリフィスの笑みはいまだ、消えていなかった。 【G-5店舗内/1日目/夕方】 【グリフィス@ベルセルク】 [状態]:全身に軽い火傷 [装備]:マイクロUZI(残弾数50/50)、耐刃防護服 [道具]:ターザンロープ@ドラえもん、支給品一式×2(食料のみ三つ分) 平賀才人の首、平賀才人の左手、ヘルメット [思考・状況] 1:ルイズを利用し優勝を目指す 2:やっぱり剣が欲しい 3:手段を選ばず優勝する。殺す時は徹底かつ証拠を残さずやる 4:キャスカを探して、協力させる。 5:ガッツ…… 【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】 [状態]:全身打撲(応急処置済み)、左手中指の爪剥離 [装備]:グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA s (強力な爆発効果付きシュワルベフリーゲンを使用可能) [道具]:なし [思考・状況] 1:グリフィスに従う 2:グリフィスが隙を見せたらサイトを奪い返した後に殺す 3:朝倉涼子を殺す 4:3のために、朝倉涼子の情報を集める 5:サイトと一緒に優勝して、ギガゾンビを殺す。 手段は問わない 6:サイトに会いに行く 時系列順で読む Back 「ミステリックサイン」 Next どうしようか 投下順で読む Back 白地図に赤を入れ Next ヒステリックサイン 157 いつか見た始まり グリフィス 193 調教 163 二人だけの第三楽章~復讐の炎は地獄のように胸に燃え~ ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 193 調教
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ゲーム終了までの死者 お前ら 何故殺たし 時間 名前 殺害者 死亡作品 死因 夜 古泉一樹 涼宮ハルヒ 218 神様ゲーム 捕食 夜 永井博之 涼宮ハルヒ 218 神様ゲーム 融合の時間切れ 夜 八意永琳 アイスデビモン 220 えーりんと闇AIBOに死ぬほど言葉攻めされて涙目なピエモンB(前編)220 えーりんと闇AIBOに死ぬほど言葉攻めされて涙目なピエモンB(後編) 刺殺 三日目・深夜 アイスデビモン 日吉若 230 第二次ニコロワ大戦Ⅰ ――War to End All wars230 第二次ニコロワ大戦Ⅱ ――魔王穴子戦230 第二次ニコロワ大戦Ⅲ ――バルバロッサ作戦230 第二次ニコロワ大戦Ⅳ ――巨人の目覚め、そして ワールドデストロイヤー反射 三日目・早朝 ピエモン 涼宮ハルヒ 232 青の炎Ⅰ ~ラスボス空~232 青の炎Ⅱ ~フタエノバトルアッー!(前編)~232 青の炎Ⅲ ~フタエノバトルアッー!(後編)~232 青の炎Ⅳ ~キラキラにしてやんよ!~232 青の炎Ⅴ ~マルクとピエモンを結ぶ絆~232 思い出はテラカオス 心臓破裂 三日目・早朝 マルク 涼宮ハルヒ 232 青の炎Ⅰ ~ラスボス空~232 青の炎Ⅱ ~フタエノバトルアッー!(前編)~232 青の炎Ⅲ ~フタエノバトルアッー!(後編)~232 青の炎Ⅳ ~キラキラにしてやんよ!~232 青の炎Ⅴ ~マルクとピエモンを結ぶ絆~232 思い出はテラカオス 絞殺 三日目・朝 涼宮ハルヒ 柊つかさ 232 第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday232 第三次ニコロワ大戦Ⅱ ――Ragnarok232 第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia232 第三次ニコロワ大戦Ⅳ ――Miserable fate232 第三次ニコロワ大戦Ⅴ ――Happily ever after ポイ捨て 三日目・朝 カービィ ノヴァ 232 第三次ニコロワ大戦Ⅰ ――Coldwar to Doomsday232 第三次ニコロワ大戦Ⅱ ――Ragnarok232 第三次ニコロワ大戦Ⅲ ――Necro Fantasia232 第三次ニコロワ大戦Ⅳ ――Miserable fate232 第三次ニコロワ大戦Ⅴ ――Happily ever after ??? おまけ 名前 最後の言葉 古泉一樹 (もう誰でもいい……この愚神を、なんとかして下さい……僕の恨みを晴らせとは言いませんが……) 永井博之 (レナ、遊戯……皆…………お前らだけはこんなクソったれの神なんかに負けんなや……!) 八意永琳 「ありがとう……」 アイスデビモン 「わ、私は……ただ…………お二人が仲良く……して……ほし…………」 ピエモン 「違う!お前は、お前はまだ……!! 私はマルクをラスボスにしなければ……!!」 マルク 「あれは……キラキラにしてやんよ…………あの言葉は………嘘?」 涼宮ハルヒ 「嫌ぁぁぁぁあああああああッ!!!!!!!」 カービィ ぼくに最後見えたのは、まぶしいまぶしい光だけ。そこになにかひらひらとしたものが見えたような気がしたが、あれはいったいなんだったんだろう? 殺害数ランキング 順位 加害者 殺害人数 被害者 スタンス 生死 1位 涼宮ハルヒ 6人 天海春香、双海亜美、古泉一樹、永井博之、ピエモン、マルク 皆殺し ● 2位 柊つかさ 5人 いさじ、ストーム1、ゴマモン、園崎魅音、涼宮ハルヒ 暴走→対主催 ○ 3位T 阿部高和 4人 キョン、鈴仙・優曇華院・イナバ、キョンの妹、伊吹萃香 無差別 ● 3位T 竜宮レナ 4人 外山恒一、前原圭一、TASさん、コイヅカ 対主催 ○ 5位T TASさん 3人 イチロー、ピカチュウ、友人 無差別 ● 5位T サトシ 3人 如月千早、越前リョーマ、永井浩二 無差別 ● 5位T フシギダネ 3人 道下正樹、オメガモン、フシギダネ無差別 ● 5位T チューモン 3人 菊地真、富竹ジロウ、ロールちゃん 皆殺し ● 9位T ムスカ 2人 ワドルドゥ、スパイダーマン 無差別 ● 9位T エアーマン 2人 琴姫、ロックマン 無差別 ● 9位T 暗黒長門 2人 福山芳樹、朝倉涼子 奉仕(キョン) ● 9位T YOKODUNA 2人 お覇王、霧雨魔理沙 無差別 ● 9位T クラモンC 2人 水銀燈、泉こなた 無差別 ● 9位T 天海春香 2人 白石みのる、エアーマン 対主催 ● 9位T 永井博之 2人 阿部高和、チューモン 対主催 ● 9位T コイヅカ 2人 矢部野彦麿、アリス・マーガトロイド 主催→参加者の殲滅 ● 9位T アイスデビモン 2人 海馬瀬人、八意永琳 主催→対主催→やっぱり主催 ● 9位T 日吉若 2人 ドラえもん、アイスデビモン 対主催 ○ 20位T 八意永琳 1人 インセクター羽蛾 皆殺し ● 20位T キョンの妹 1人 小笠原祥子 対主催 ● 20位T 園崎詩音 1人 園崎詩音 無差別 ● 20位T 伊吹萃香 1人 高町なのは 対主催 ● 20位T 博麗霊夢 1人 YOKODUNA 対主催 ○ 20位T クラモンD 1人 高槻やよい 無差別→? ● 20位T ロールちゃん 1人 ニート 対主催→暴走 ● 20位T 高槻やよい 1人 削除番長 対主催 ● 20位T 削除番長 1人 永井けいこ 無差別 ● 20位T 朝倉涼子 1人 暗黒長門 ステルス ● 20位T ゴマモン 1人 柊かがみ 奉仕(柊つかさ) ● 20位T 外山恒一 1人 サトシ 対主催 ● 20位T KAS 1人 谷口 対主催 ○ 20位T 富竹ジロウ 1人 ティアナ=ランスター 暴走(雛見沢症候群発症) ● 20位T 武藤遊戯 1人 ムスカ 対主催 ○ 20位T ピッピ 1人 ピッピ 対主催 ● 20位T ヨッシー 1人 ヨッシー 対主催 ●
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1. 俺が北高に入学し、SOS団とかいう世にも奇妙な団体に入団してから、いや、拉致されてからと言ったほうが正しいだろうか、まあそんな感じで早々と時間は過ぎ去り、二回目の夏休みを迎えていた。その間にもいろいろと、古泉発案の第二回SOS団夏合宿やら、その古泉が真っ青になり、朝比奈さんがおろおろとし、長門が奔走しまわった事件などがあったのだが、ここでは語らないでおこう。それはまたいつか他の機会があれば話そうとおもう。 さて、俺は今、クーラーがきいた自室で朝から久々の惰眠を貪っている。 両親と妹は商店街の抽選で当たったとかいう三泊四日温泉旅行の三名様用チケットとやらを使って今朝早くから出かけてしまった。俺を置いてな。 全く酷い家族だぜ。母親いわく、あんたは涼宮さん達と合宿に行ったでしょうが。だったらあんたは行かなくてよし、なんだそうだ。 悔しいから見送りなんてしないで寝てようとしたのだが、朝早くから妹のフライングボディープレスを喰らって起こされ、結局見送りをする羽目になった。 何が悲しくて自分が行かない家族旅行の見送りなどせねばならんのだ。 はぁ。それにしても何も変わってないな、マイシスターよ。 学年が一つ上がって六年生になったんだ。そろそろ毎朝の過激な起こし方はやめてくれないか?お前だって成長して大きくなってるんだぞ、お兄ちゃんの身体がそのうち壊れちまうじゃないか。起こしてくれるのは助かるがもっと静かに起こしてくれ。少しはミヨキチでも見習ったらどうだ? はぁ。それにしても何にも分かってないな、マイマザーよ。 合宿とは名目上のものでしかないのが何故わからんのだ。終業式当日にいきなり明日から合宿と言われ、強制連行同様に連れて行かれたんだぞ。去年もそうだったではないか。 これで俺の長い夏休みの最初の数日くらいは誰にも文句を言われず昼過ぎまで寝続ける日々を送ろうという周到な計画は二年連続で失敗に終わった。 ・・・予想していたことだがな。ハルヒのことだ、どうせあいつは夏休み初日から厄介事を持ってくるのだろう。そう思って何も予定を入れてなかった自分もいたりした。万が一予定を入れてたとしても合宿に強制連行されていたと思うが。 そうそう、言い忘れていたが今日はSOS団の第二回夏合宿の次の日なのだ。 どうやらあのハルヒでさえ少しは来たらしく、 「明日と明後日はSOS団はお休みよ。だからこの合宿の疲れを完全に取り去っちゃいなさい。明々後日からは忙しいんだからねっ」 と解散前に言っていた。 「どうせキョンは寝てるだけなんでしょ?だったらあんたはこの二日間で宿題を全部終わらせときなさい。去年みたいなことになったらあんた死刑じゃ済まさないわよ?」 というありがたいお言葉まで頂戴したがな。生憎俺は宿題は最後の最後までとっておくタイプなんだ。知ってるか?宿題ってのは出すまでが宿題の期間なんだよ。だから提出前に国木田あたりにでもちょちょっと写させてもらえばいいんだ。今年の宿題はそこまで多いもんでもないからな。ん?谷口?そんなの俺の知ったこっちゃねえや。あいつのことだからどうせ宿題は学校にでも置いてあるんだろ。終業式の帰りにまるで中に何も入っていないかのように鞄を振り回してたしな。 まあそんなわけで俺は一言多い団長様からのお言葉にあやかって数日遅れののどかな生活を送っているわけだ。あのハルヒが休みをくれたんだ。これを棒に振ったらもったいない。 誰も邪魔することのない平和な朝。これこそが俺の求めていたものである。 そのなかでもやっぱりクーラー+柔らか布団は最高だな。俺はこれのために夏休みを迎えたといっても過言ではないだろう。できることならば、この平穏な時間がずっと続いてほしいものだ。 よし、午前中はずっと布団の中で過ごそう。幸い朝飯は見送りのときに食っちまったからな。シャミセンはいるが・・・そうか、お前もここで寝たいか。うんうん、お前も分かる奴だなぁ。それでは一緒に寝ようではないか、とまどろみ始めたころだった。 とんとん。何者かが俺の肩を小さく叩く。それが誰かなんて考えるまでもない。 こらシャミセン、やめなさい。俺は寝たいんだ。 とんとん。なんなんだよ、しつこいなあ。そう思って寝返りを打つと、何か暖かくて毛むくじゃらなものの中に顔を突っ込ませてしまった。 むっとして目を開けるとそこには丸くなったシャミセンが。 俺は一気に眠気がすっ飛んだ。 考えてみろ。俺とシャミセンしかいないこの家で叩かれた肩。しかしシャミセンは俺の横でぐーすか寝ているときた。 じゃあ・・・・・・ 一体俺の肩を叩いているのは誰なんだ? そう考えてるときに声が聞こえてきた。 俺はその言葉に一番驚かされたね。いや、誰だって驚くだろう。全く実に覚えがないのにこんな言葉を聞かされた日にはな。 「…ねぇ、おきてよ?おとーさん!」 イマナントイッタ? 「おきてってば、おとーさん」 恐る恐る声のする方向へ顔を向ける。 ・・・誰だ、こいつ。そこには白いワンピースを着た髪の長い見知らぬ女の子が立っていた。 いや、正確言うと、どっかで見たことあるような気がするんだが・・・ 駄目だ。思い出せん。 それはいいとしてだな。これはどういうことだ?一体何が起きている?この状況が分かる奴、全部説明しろ。 ねえ、君はどこから入ってきたのかな?どうしてここにいるのかな?パパとママが心配してるから早く帰りなさい。それと俺とどっかで会った事あるか? 「なにいってるの?おとーさん。ここおとーさんのおうちでしょ?」 ・・・・・・へ?どうなってるんだ? 「ちゃんとしてよね、もう」 あぁ。そういうことか。きっと俺が寝てる間に誰かに襲われるか襲うかしてだな・・・ どっかで見たことあるのはその相手の面影なんだな、うん。 ・・・・・・ってそんなことあるか。あれだ、あれ。どうやらハルヒの神様パワーとやらで世界が改変されちまったらしい。この歳で父親だなんてありえないからな。ネタが分かっちまえばもう何も驚くことはない。さっさと長門に連絡してどうすればいいのか聞くとしよう。やれやれ、結局俺には心休まる日というのは無いってことなのかねえ。 「おとーさん、なんかへんだよ?どうしたの?」 心配そうに聞いてくるマイドーター。どうせもとに戻ったらこいつは消えちまうんだ。少しの間だが可愛がってやるとしよう。 「ん?何でもないぞ。娘よ。」 そう言って頭をぽんぽんやさしく叩いてやると、猫を膝に抱いて背中を撫でているような笑顔で笑った。はて、なんでだろう。何故か脇腹が痛むんだが。 まあいいか、ひとまず長門に電話しよう。 携帯の電話帳から長門の自宅番号を選んで電話をかける。1コールもしないうちに長門がでた。いつも思うことなのだが、こいつはいったいどんだけ電話に出るのが早いんだ?まさか家ではいつも電話の前にいるんじゃないのか? 「もしもし、俺だが長門か?」 「…そう。あなたが危惧しているような世界改変は起こっていない」 そうか、起こってないのか・・・ってちょっと待てよ?じゃあこいつは何なんだ?まさか本当に俺の娘だとでもいうのか?とういうか長門よ。何故お前は俺がまだ聞いてもいない事の答えを言えるんだ?もしかしてこいつは人の心が読めるのではないだろうか? 「…大丈夫。そこにいるのは貴方の子供ではない」 そうか、お前がそう言うのなら確実だな。だが長門よ。人の心を勝手に読むのはよそうな。俺は娘のことはまだ一言もお前に言っていないぞ。 「…善処する」 「んで、長門よ。お前は俺にここにいるこの子は俺の子ではないといったよな?じゃあ誰なんだ?朝比奈さんみたく未来からきたのか?」 ぽんぽんとベッドに座って電話をかけている俺の横でシャミセンをいじっている女の子の腰の辺りまでありそうな長い髪の毛を撫ぜてる。するとその子はふふっと笑った。うん、癒される。俺も親になるんだったらこんな娘を持ちたいものだ。 「…そうではない。付け加えるならば古泉一樹関連の事柄でもない」 ハルヒでも朝比奈さんでも古泉でもないだと?じゃあ一体なんで俺のところにいるんだ? 「…電話では情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。だからその子を連れてわたしのマンションに来て欲しい」 分かった。すぐに行くから待ってろよ。 「…それと」 なんだ?長門でも言い忘れるようなことがあるのか? 「…なんでもない」 お前がそういうふうに言うなんてめずらしいこともあるもんなんだな。なんだか声に少し緊張した色が混じっていた気もするが、本人が言いたくないのなら仕方ない。気になるがマンションに行くまで我慢するとしよう。 「…それでは待っている」 分かった。またお前に助けられちまったな。 「…いい。今回のことはわたしも原因因子の一つだから」 どういうことだ?それは。まあマンションで聞けばいいか。 「それじゃあ切るぞ」 「…分かった」 そう言うと俺は電話を切った。今日の長門はどこかおかしい。三点リーダはあいつの十八番だが、今の会話の中にはありすぎではないだろうか?何か悩んでいるようにも見えたが・・・。声だけではちゃんとは分からん。 「ねー、おとーさん、なんのおでんわだったの?」 ん。何でもないぞ。だがちょっと用事ができちまった。 「ごようじ?おとーさんどこかおでかけしちゃうの?」 そう悲しそうな顔をするな。ちゃんとお前も連れていってやるからな。 「ほんとに?ふふっ。おでかけだ~!」 さっきの顔から一変して笑顔になった。変わり身の早い奴だ。そういえば妹もこのくらいの時はこんな感じだったな。もっとも、今もそう大差は無いように思えるが。兄として心配極まりないぞ。 「ちょっとリビングで待ってなさい。俺はまだ着替えてないし、行く準備ができてないからな」 「は~い。リビングでまってるね」 そう言うとたたたっと走っていった。こら、女の子が廊下を走っちゃいけません。 「は~い」 返事が聞こえてからは走る音が聞こえなくなった。うん。よろしい。聞き分けのいい子だ。 妹よ。お前もこれくらい聞き分けがよければいいのだが、それは無理な相談なのだろうか? さて、着替えるとするか。 俺はパジャマを脱いで、ジーンズと半そでのシャツを装着する。準備完了。 ・・・我ながら早いな。それじゃ、出かけるか。さらば、布団よ。あの子には悪いがこのままじゃいろいろとまずいからな。早くなんとかしないと。 着替えが終わった俺はリビングに向かった。部屋に入ると、我が娘はソファーで姿勢を正して静かにちょこんと座っていた。 「あ、やっときた!どう?おとーさん。わたし、ちゃんとおんなのこらしくできてた?」 俺がリビングに入るとてくてくと近づいてきた。さっき言ったことを気にしてたのか?うん。ちゃんとできてたぞ。よしよし、いい子だ。 そう言って頭をくしゃくしゃと撫でてやる。あ、ちょっと照れてる。さっきも言ったがこんな娘を俺も持ちたいもんだ。まあ仮にも今は俺の娘なんだが。 「じゃ、出かけるぞ」 「うんっ!」 元気いっぱいに答える娘。こっちまで元気になってくる。 ・・・あれ?もしかして俺、親馬鹿になってる?いやいや、そんなことないって。多分。 そんなわけで家を出た俺たち。長門のマンションへは歩いていくことにした。自転車のほうが早いんだが危ないからな。もし振り落とされでもしたら大変だ。 それにしても暑い。なんせ今は夏の昼近く。道にはほとんど人影がない。それはそれで好都合なんだが。夏は暑いもんなのよ、とどっかの団長様は言っていたが、まさかこの暑さもハルヒが作り出してるんじゃないだろうな。もしそうだとしたら迷惑極まりない。さっさと止めさせなければ。 なんて考えていると、 「・・・ねぇ、おとーさん、あとどのくらい?」 という言葉で思考がこちら側に戻ってきた。みると我が娘がぐったりしてるではないか! これはピィィィィンチッ!!!と某教育番組の黄色いタイツ男のように心の中で叫ぶと娘をそばの公園の日陰のベンチに置いて近くの自販機まで全力疾走。俺の分と娘の分の二本のスポーツドリンクを買うと疾風のようにもとの場所へ戻った。別にこのくらい普通だよな?全然親馬鹿じゃないよな? そんな事は置いといて娘にスポドリを渡すと、ありがとー、ちょっと疲れた笑顔で言って受け取った。俺も飲むとするか。 ゴクゴクゴク。ぷっはあ!!!暑いなかでスポドリ一気飲み。家の中やスポーツ後に飲むのもいいが、これはこれで旨い。疲れてればなおさらだ。 早々と飲み終わった俺に対して娘は缶を両手で抱えてコクコクと少しずつ飲んでいる。 そういえば昔、親父とまだ小さかった妹と一緒に出かけたときに今と似たような場面があったが、確かあの時の親父がなんともいえない表情をしていたな。今ならそれも分かるような気がする。なんか癒されるというか、和むというか、まあなんとも言い難い感じだ。 だから俺もあのときの親父と同じことを言ってやろうと思う。 「さ、父ちゃんの肩に乗れ。疲れたろ?肩車してやるぞ」 と言ってしゃがみこむ。じゃないと乗れないからな。 「え?いいの?おとーさん、つかれちゃわない?」 子供が親の心配をするもんじゃありません。こうみえてもおとーさん、若いんだぞ。なんてったってまだ十七歳だからな。 「うんっ。分かった。ありがとーね、おとーさん」 よし、じゃあさっさと乗りなさい。ほれ、その缶、一旦こっちによこしな。乗るときに邪魔だろ? 「いいか?立つぞ。・・・よっこらせっと」 そう言って俺は立ち上がった。ここで一つ誤解して欲しくないところがあるのだが、俺は決して親父くさいわけではない。ただ暑いから自然と口に出ちまっただけだ。そこんところを間違えないでほしいね。・・・って俺は誰に説明してるんだか。 「それじゃ、行くとするか」 おー、という娘の声援を耳に俺は長門のマンションまでの道のりをさっきよりも少し早足で、かつ上に乗っている娘が落ちないように注意しながら歩き出した。 それからしばらく何の他愛も無い話をしながら歩みを進めたわけだが、ん?どんな話をしたかだって?そりゃあ相手が小さい子だからな。あの雲はなになにに似てる、とか、これはなんて名前か、とかまあそんなもんだ。特筆すべきことは無かったように思う。おとーさんおとーさんと連呼されていれてるのをどこかの奥さんに聞かれて白い眼で見られたのが数回あったこと以外はな。 はぁ、こんなのがハルヒに知られた日には、 「あんた、死刑だから」 の一言で殺されちまうんだろうな。もしかしたら、何やってんのよ、このロリキョン!かもしれないが。どっちにしても俺の死は免れないだろう。俺ができることはこれ以上誰かに見られないうちに長門のマンションにたどりつくことだけだ。 頼むぞ、仏様。俺を導いてくれ。普通ならばここは神に祈るところだとおもうのだが、古泉いわく、神とやらはハルヒらしいからな。神には祈れん。ばれちまったら大変だ。 とまあ娘と適当に会話をしつつ、そんな事を漠然と考えてるうちに長門のマンションまでついていた。ウィーン、と音をならして自動ドアが開くのと同時に冷たい空気が流れ込んでくる。ふう、涼しい。やっぱりクーラーはいいなぁ。 「ねぇ、おとーさん。いつまでかたぐるましてるの?もうついちゃったよ?」 ああ、すまん。すっかり忘れてた。今降ろしてやるからちょっと待ってなさい。 と言ってしゃがみ、中腰くらいになったときだった。 「とうっ」 という掛け声とともに俺の肩を蹴って後ろに飛び降りた。何ぃ!?俺を踏み台にした!?・・・じゃなくって、 「危ないだろうが。怪我でもしたらどうする。そんなことやっちゃいけません!」 振り返ってみると、一、二メートルくらい後ろにくったくのない笑顔を浮かべて立っていた。着地の瞬間は見ていないが、転んだりしてないように思う。 まあひとまず一応は軽くでも叱っておかないとな。どっかの誰かさんみたいになっちまう。 「ごめんなさい。でもざんねん。おとーさん、おどろくとおもったのにな」 十分驚いたぞ。この運動能力は目を見張るものがあるからな。その証拠に、すでに俺よりいいんじゃないか、とか、この歳でこんなに飛べるなんて人間じゃないみたいだな、とか、思っちまったし。 いかんいかん、ここに来た目的を忘れてた。俺は708号室を呼び出した。ぷつん、という相手がインターホンに出たことを示す音を確認すると、マイクに言った。 「長門か、俺だ。入れてもらっていいか?」 「…入って」 かしゃんと音がして玄関の鍵が開く。興味津々、といった感じで辺りをきょろきょろしている娘に、行くぞ、と声をかけ、ちょこちょことこっちにくるのを確認してからエレベーターに乗り込む。 「今から父ちゃん大切なお話があるから、その間ちゃんといい子にしてるんだぞ」 「うん。分かった」 「いい子にできてたらあとでアイス買ってやるからな」 そういうと目を輝かせてさっきより元気に、うんっ、と言って膝の前に手をそろえて気をつけの姿勢をし始めた。おいおい、まだ早いぞ。 チーン、と目的の階に到着したことを知らせる電子音がして、エレベーターから出た。 708、708は、と。あ、ここだここ。ドアのネームプレートに長門有希と書かれているのを確認すると、ドアの横についているチャイムを鳴らす。 ピンポーン。長門、俺だ。そういうが早いか、かちゃんとドアの鍵が開き、中から小柄な宇宙人が出てきた。 「…入って」 とデジャビューかと疑いたくなる返事を聞いて、うながされるままに俺は長門の部屋へ上がりこんだ。そういえば、俺が初めて長門の家に呼ばれてからずいぶんたつが、これで通算何度目なのだろうか?数えてみると結構な数になる気がするが・・・まあいいか。 娘のほうを見ると、動きが少しぎこちないようだった。そりゃそうだ。いきなり知らない人の家に連れてこられたんだからな。男だったら気にせずに騒いでいたかもしれんが、こいつは女の子だ。ちなみに俺がガキのころは騒いでいた・・・・・ような気がする。 なんて少し懐かしいことを考えながら玄関に入り、靴を脱いで部屋に上がると、今までどおりに俺はちゃぶ台へと進んだ。長門が話しをするときは大抵このちゃぶ台だからな。 「なぁ。」 後ろにいる長門に振り向きながら話しかける。 「こいつはどうすんだ?違う部屋に連れて行ったほうがよくないか?それとも一緒に話を聞かせてもかまわんのか?」 「どちらでもかまわない。恐らく彼女の今の状態では恐らく理解することが不可能であると推測される」 あのですね、長門さん。いつも普通に理解できない俺はどうすればいいのでしょうか? 「………」 長門は少し困ったような顔をした。はい、すみませんでした。俺は、心の中で手を合わせてそっと謝りながらちゃぶ台の前に座った。 さてと、こいつはどうするかな。俺の横に正座している娘をみる。ちゃんと手をそろえて膝の上に乗せ、唇を真一文字に結んで少し下を向いている。やっぱりいっちょまえに緊張してたのか。なら少しその緊張をほぐしてやるか。俺は今一度頭をくしゃくしゃと撫でてやる。家で撫でたときにうれしそうにしてたからな。きっと頭を撫でられるのが好きなんだろう。案の定娘は俺のほうを向いてにこっと笑い、落ち着いたようだった。 本題に入ろうと思って長門のほうを向くと、長門と目が合った。 「どうした?そんな珍しい光景か?」 「……なんでもない」 どうしたんだ、こいつ。長門鑑定家を自称する俺でもその目から真意は読み取れなかった。 もしこれが妹だったら羨ましがってるんだろうが、流石に長門でそれはないだろう。うーん、俺もまだまだ修行が足りないな。おっと、話が脱線しちまった。 「んで、話ってのは何なんだ?」 「……………。」 少し話しにくそうな顔をしてお得意の三点リーダを放つ。俺は俺が娘を撫でてやっていた間に入れてくれたのであろうお茶をすすりながら返答を待った。ずずず・・・。おっ、こいつまた腕を上げたな。もう少しで朝比奈印のお茶レベルになるのではないだろうか。 「…情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。でもできるだけ簡単に離すから聞いて」 長門の言葉で我に返る。おう。いいぞ。何でも聞いてやるよ。俺だって伊達に今までSOS団やってる訳じゃないんだ。多少のことでは驚かんぞ。まあ長門が俺個人に話をするときはほとんどが凄い代物なんだがな。 「…情報統合思念体全体の意思として、朝倉涼子の再構成が決定した」 脳裏に一瞬ナイフを俺の腹にねじ込んできたときの冷笑を浮かべた朝倉の顔が浮かび上がる。冗談じゃない。きっと今のは俺の聞き間違いだ。そうに違いない。 「すまんな、よく聞こえなかった。悪いがもう一度だけ言ってもらえるか?」 「情報統合思念体全体の意思として、朝倉涼子の再構成が決定した」 聞き返して得られたものは冷酷な現実だった。あの殺人鬼・朝倉が復活する。 そう考えたとたん、向こうの世界で刺された脇腹に鈍い痛みが走り、俺はうっと声をあげて顔をしかめた。ちょんちょん、と俺の腕がつつかれる感触がし、その方向を向くとそこには娘が不安そうな顔をしていた。 大丈夫だ、ありがとな、という意味をこめて微笑を浮かべると、娘もそれを理解したのか手を引っ込めて目線をもう一度自分の膝に向ける。ほんとありがとな。助かった。 「大丈夫?」 長門のその目に俺を心配しているようなオーラが宿っていた。お前もありがとな、長門。 「もう大丈夫だ。続けてくれ」 コクッと頷くと淡々と話を再開した。 「朝倉涼子は優秀なインターフェイス。情報操作能力はわたしに少し劣るものの、戦闘能力に関して言うならばほぼ互角をいっても差し障りは無い。それゆえバックアップとしての価値はかなり高いクラス。去年の冬の山荘での事件も朝倉涼子が存在していればすぐに解決できたはず。それに今のわたしにはバックアップが存在しない。天蓋領域のインターフェイスがこの時間平面上に存在する今、それはとても危険。そう考えて情報総合思念体は朝倉涼子を再構成することにした」 つまりだ、おまえの手助けのために復活する、ということか? 「その危険というのはわたしだけでなく涼宮ハルヒやあなたにも及ぶ可能性がある。もしそのような事態が起きたときにわたしが自立行動不能の場合の保険、という意味も含まれている」 でもどうして朝倉なんだ?喜緑さんや他のインターフェイスとやらじゃ駄目なのか? 「わたしを除いて一番あなたや涼宮ハルヒに近いインターフェイスは朝倉涼子。彼女が急に戻ってくれば恐らく涼宮ハルヒは強い興味を示し、観察を始めるはず。そうなればこちらも観察が楽になる、というのが情報統合思念体の考え。それに穏健派は常に一定の距離を保つことが義務付けられているので緻密な交流を良しとしない」 そうなのか・・・。んで、一つ聞かせてもらえるか?朝倉はいつ復活するんだ? 「もう再構成は済んでいる」 「なんだって!?どこだ!あいつはどこにいるんだ!?」 「おとーさん、落ち着いて。おねーちゃんがこわがってるよ?」 娘の言葉で正気に返る。どうやら俺は興奮のあまり、長門に掴みかかって大声で叫んでいたようだ。大丈夫か、長門。本当にスマン。お前に当り散らすなんてお門違いもいい所だな。 「わたしは大丈夫。あなたも気にしないで」 お、おう。そうは言っても気になるもんなんだが。 「改めて聞かせてもらうが、結局朝倉は今どこにいるんだ?以前にあんなことがあったから気が気じゃないんだが」 「彼女はここにいる」 そう言って長門は一旦口を閉じた。俺はごくりと唾を飲み込んだ。 「朝倉涼子は………」 言いかけてもう一度口を閉じた長門の三点リーダの時間が何時間にも感じられる。実際は十秒あるかないかなんだろうが、今の俺にはその何十倍もの時間が過ぎているように思われた。 突如長門が腕を上げてある一点を指差す。まずその指を見て、次に指の指す方向に視線を移していく。そしてその直線はあるものにぶつかったのだ。それは俺の思考能力を奪うのには十分な衝撃を持っていた。信じたくはなかった。だが、次の長門の言葉の前に、俺はただ呆然と眺めるしかできなくなってしまったんだ。 「…………朝倉涼子はその子」 プロローグへ 第二章へ
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ここではハルヒシリーズに登場する、好きなキャラに投票する投票所です。 ちなみに自分はきょこたんが一番好きです。皆さんは誰が好きですか? では、投票スタート! 順位 選択肢 得票数 得票率 投票 1 涼宮ハルヒ 333 (11%) 2 キョン 254 (8%) 3 佐々木 254 (8%) 4 長門有希 166 (5%) 5 キョンの妹 127 (4%) 6 周防九曜 121 (4%) 7 吉村美代子 117 (4%) 8 古泉一樹 100 (3%) 9 鶴屋さん 92 (3%) 10 森園生 76 (2%) 11 橘京子 62 (2%) 12 谷口 56 (2%) 13 阪中 55 (2%) 14 朝比奈みくる 53 (2%) 15 カマドウマ 52 (2%) 16 喜緑江美里 52 (2%) 17 神人 51 (2%) 18 藤原 51 (2%) 19 コンピュータ研究部部長 49 (2%) 20 シャミセン 49 (2%) 21 国木田 49 (2%) 22 生徒会長 49 (2%) 23 朝倉涼子 46 (1%) 24 シャミツー 43 (1%) 25 三栖丸ミコト 43 (1%) 26 上ヶ原パイレーツのキャプテン 43 (1%) 27 壇上剛一(うんこ詐欺師) 43 (1%) 28 岡部 43 (1%) 29 愛宕雄也 43 (1%) 30 新川さん 43 (1%) 31 樋口さん 43 (1%) 32 阪中の母 43 (1%) 33 鶴屋房右衛門 43 (1%) 34 ハカセくん 42 (1%) 35 伊集院泰一郎 42 (1%) 36 多丸圭一 42 (1%) 37 多丸裕 42 (1%) 38 情報統合思念体 38 (1%) 39 ルソー 34 (1%) 40 管理人 33 (1%) 41 マイク 32 (1%) 42 渡橋泰水 23 (1%) 43 岡部教諭 8 (0%) 44 ジョン・スミス 6 (0%) 45 生徒会会計 6 (0%) 46 住職 5 (0%) 47 オッティーリエ・アドラステア・ホーエンシュタウフェン=バウムガルトナー 4 (0%) 48 ヤスミ 4 (0%) 49 大森電器店店長 4 (0%) 50 藤原將 4 (0%) 51 シャンクス 3 (0%) 52 山土啓二 3 (0%) 53 松下涼 函南 3 (0%) 54 蛙 3 (0%) 55 豊木光彦 3 (0%) 56 a 2 (0%) 57 ゼニガメ 2 (0%) 58 天蓋領域 2 (0%) 59 朝比奈みちる 2 (0%) 60 ふんもっふ 1 (0%) 61 朝倉未来 1 (0%) 62 藤原將(包茎) 1 (0%) 63 黒瀧純(童貞) 1 (0%) その他 投票総数 3140
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満員電車は好きでは無い。 特にこんな時期では、蒸し蒸しとしてクーラーなんてかかっていないに等しいし、 知らない人間と密着することに嫌悪感を抱いてしまう。 早く駅に着いてくれないものか…と窮屈に身体を縮めて耐えて居た時だ。 「っ…?!」 ぞわりとした感覚が、下半身から伝わってきた。 誰かに触られた?何故?誰が? 身動きのできないこの状態で、相手を特定することができない。 女子と間違えた…という事は無いだろう。身長は高い方だし、第一大抵の女子は 専用車両に乗り込んでいるだろうから、この車両に乗っているのは大半が男だ。 溜め息を吐きたくなる。 こんな柔らかみのない男の身体を触って、何が楽しいのか… 「ひっ…ぁっ?」後ろを一度撫で上げた手が、今度は前に回ってきた。 大きくてごつい、男の手。 それが自身をためらいも無く握ってきたのだ。 「ふぁ…っく」 制服の筈を握り絞めていた手を、急いで口に当てる。「んんっ…」 それでも洩れる声が憎らしくて、俯いて袖をキツく噛んで必死に押さえた。 男の手は容赦というものを知らない。痛みを伴う程の強さで扱いてくる。 思考がグルグルとして追いつかない、声を出して周りに気付かれないようにするのがやっとだ。 行動はエスカレートしていき、ジーッという音と共にファスナーが下ろされた。 真っ青になりながら、その音を聞く。 上から触られただけなら後は残らないが、こんな事したら、誰かに見られてしまう。 ガタガタと震えながらも口元の手を男の手に伸ばし、やめさせようとした、が。 「なっ…?!」 逆に捕らえられ、その手を後ろに回される。 そこにあったのは、布地の上からでも分かる熱く猛ったもの。 それを握らされて全身が硬直した。 もう片方の男の手は、ゆっくりとズボンの中へ侵入してきている。 電車がガタン、と大きく揺れた。 何とか体勢を維持している震える体に、男の熱い体が纏わりつくように張り付いた。 荒い息が、首筋にあたり、嫌悪感で吐き気がこみ上げる。 振り解きたいと思うけれど、それも適わない。 男の手は、下着の上からゆっくりと撫で回し続け、刺激に慣れていないそこを、 先ほどとは違ってやわやわと攻め立てている。 もう片方の手は、無理やり回された手の上から、熱い男のソレを強弱をつけて握らせてくる。 誰にも触られた事もないそこを刺激され、触った事もない、他人のソレを握らされて・・・ くくっ、という笑い声と吐き出された息が気持ち悪くて「ひっ」と短く悲鳴を上げてしまう。 「なぁお前、そんなお綺麗な顔して、もしかして初めてかぁ?」 低く耳に届いた声のその内容に、そんなの当たり前だと返してやりたい。 でも、周りに発覚する事が怖くて声を上げることもできない。 片手は拘束されていて、もう片方は鞄を持っている。 唇を噛む事でしか声を抑える事ができない今の状況で、これ以上何かをされてしまっては、 抑える事なんてできないだろう。 早く駅について欲しい。 そうすればこの手から逃れて、悪夢を、すぐに終らせる事ができるのに。 だが、世の中そう思い通りには行くわけも無い・・・ 下着の割れ目からごつくて荒れた指が進入し、直接触れられた。 本当に、気持ちが悪いのに。身を捻ろうとすると指が動かされて思わず体が硬直する。 中で窮屈そうに動かしていた指先が、とうとう少しずつ先走りを零していた鈴口に たどり着いてしまった。そこを直接擦られる感覚に、嫌悪感以外の何かを 感じてしまいそうになり、嫌々と小さく首を振るしかできない。 「ん?なんだ、まだ剥けてもいないのかよ・・・」 「い・・・嫌・・だぁっ」 声を出してはいけないと分かっているのに。押し殺そうとしても、殺しきれない。 そんなこと、個人差ではないか。自分でだってほとんどしたことがないのに、そんな・・・。 男の指にぐっと力が入った。 「綺麗な顔した兄ちゃん、俺が剥いてやろうか・・・?」 走る痛みに、状況に、涙腺までが弱まってきたのか目の前がじわりと滲んできた。
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「・・・!」 「あれれー、鶴屋の靴箱、すっげえ汚れてんじゃんよーwwww蟲の死骸も混じってるとかwwねーよwww」 「めがっさばっちいですねwwwサーセンwww じゃ、このハンカチでなんとかしてやんよwww」 バサッ 「・・や、やめっ、返してよ、それはあたしとみくるの・・」 下駄箱を磨いて、ハンカチゆすいで。 もう、涙も出なくなっちゃったよ。 気づいたら夕方、キョンくんたちもそろそろ帰る時間だよね・・ やだなあ・・ こんなとこ見られたら、また嫌われちゃうね もう、涙も出なくなっちゃった 「だ、だいじょぶ! あたしはめがっさ元気だから、キョン君は皆と一緒に帰ってやってほしいっさー!」 「面会、どうぞー」 薬臭い… どこ、ここ。 …あれ、私、ベッドなんか持ってないよ。 ここ、ほんとどこ…? …足…動かないし …動かせないのかなー? さっき、面会って聞こえたなあ…やっぱりここ、病院だよね。 ・・どっかで怪我しちゃったかなあ あんまり覚えてないやー 「外部からの強力な情報ハッキング。それが、彼女を狂わせた。」 「それであんなに俺を…俺のことを…」 「・・彼女の因果情報にもバグが発見された おそらく、朝倉涼子のばら撒いた、イレギュラーな情報。 私や朝比奈みくる、涼宮ハルヒ、古泉一樹、そしてあなたは、様々な情報が飛び交うこの文芸部室に常駐していたため、その影響をダイレクトに受けなかったと思われる。」 「・・ちくしょうっ、こんなところであの魔窟設定が蘇ってどうするんだよ・・!」 「その・・外部からの干渉はあなたにも作用していると思われる。 彼女への」 「ちくしょうッ! なんなんだよ、その外部から外部からってよぉ!あの人が何したって言うんだよ! 俺が何したってんだよ! なんでこんな辛い思いしなきゃいけねえんだよ!」 「・・・」 また、私のせいで、みんながイライラしてる ごめんなさい ごめんなさい